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今日の一言

技術と用途;

私の研修をいくつか受けていただくと、「その言葉って、前に別の研修でも出てきましたよね」と言われることがある。確かに、いくつかのキーワードについては、多くの研修で重複する。たとえばロジカルシンキング研修と問題解決研修で重複するなら、誰もが納得する。テーマが似通っているからだ。だが、たとえば信頼関係を構築するようなビジネスコミュニケーションの研修とロジカルシンキング研修、または、評価者研修と新入社員研修といった具合に、全く異なるとしか思えないテーマで、同じ内容が出てくることもよくある。こういうことがあると、最初の企画提案段階で、「この二つの研修で同じ内容が出てくるのは、おかしくはないか?」といった指摘を受けたり、「違う内容にしてください」という要望を頂いたりする。その度に、技術と用途という視点の違いを説明している。
たとえば、私がよく使用するキーワードの一つに「スキーマ」という言葉がある。元々はコンピテンシーという評価の視点を、この業界の師匠である川上さんという方から教えて頂いた時に、一緒に伝授された言葉だ。偏った経験、断片的な情報によって形成される思考の枠組み。シンプルに言えば経験に基づく、決めつけ、思い込みである。採用や年度の考課など、人を見る時に、私たちは無意識に自分のスキーマで「この人はこんな人だ」と決めつけ、その決めつけに沿って評価をしてしまう。偏ったり、固定化したり。同じ人を二人の上司が評価すると、その人についての記憶、経験の持ち方によって評価が極端にぶれたりする。そういうメカニズムとして教わった。このスキーマという知識、それからそのスキーマの弊害を回避するための技術を、私は当初、「人を評価する」という用途とセットで教わったのである。
だが、このスキーマとそれに関わる技術は、よくよく考えると、「客観的、論理的に判断する」ということが必要な場面では、常に意識すべきだし、活用すべきものなのだ。だから、ロジカルシンキング研修や問題解決研修、報・連・相研修やプレゼンテーション研修、折衝・交渉研修、動機づけや信頼関係の構築など、あらゆるビジネスシーン、用途で有益なアプローチになる。だから、重複するのだ。
技術は用途とセットで学ばなければ、実践につながらない。研修には用途側から企画されるものと、技術側から企画されるものとがある。いずれにしても、完成形は技術+用途となる。その時に、その技術をその用途のみに使おうと思って学ぶよりは、「他にどのような場面、どのような用途で使えるか?」ということを考えながら身につけていくと、一つの学びが十にも二十にも広がっていく。
まずは自分の得意技となるような技術を一つ、ピックアップしてみよう。そして、それを今までどういう用途に使用していたかを検証してみる。それを他にも転用しようという視点で再構築してみると、自分の実力が飛躍的に上がっていく近道になる。一番効果的で、即効性のある自己開発のアプローチだ。ぜひ試してみていただきたい。