2020.02.12
実用編(1)業務分析 ②高業績者インタビューの進め方(つづき)
<成果の構造化の一例>
今回は、前回ご説明した要素分析のつづきです。
要素分析の第一歩は、成果の構造化。その注意点として、結果的に無駄だったように見える成果(成果と関係なさそうな活動や成果)に気を付けましょう、という話をしたところでした。
その具体例を示します。
最終成果をわかりやすく契約獲得としましょう。1件100万円の研修を受注した。
その取り組みをプロセスに分けたら、以下のようになったとしましょう。
<プロセス1> 情報収集
顧客からの『マネジメント力強化』に関わる研修依頼を、メールで受信した。
電話でやりとりをした結果、以下のことがわかった。
(1)研修の目的は中途社員の早期離職防止
(2)早期離職の原因は管理職のマネジメント不足という課題認識
しかし、これらの認識が事実かどうかは電話では確認できなかったので、とにかく企画書をもとに訪問して、事実関係を確認したほうが早いと考えた。
<プロセス2> 訪問ヒアリング
一般的な部下との信頼関係構築、育成指導をテーマとした企画書を作成してその提案という名目で訪問した。
訪問してやりとりをした結果、以下のことがわかった。
(3)中途採用社員の離職原因は、事実関係の確認ができておらず、実態は不明
(4)一方で、管理職のふるまいやマネジメントについて、明らかに問題のある言動も確認できておらず、むしろ穏やかで健全な人財であると人事の全員が認識している
(5)それにも関わらず、『離職原因は管理職のマネジメント不足』と認識したのは、「それ以外に思いつかなかった」というのが正直な話であった
この結果を受けて、その場で口頭にて「一般的な研修ではなく、管理職と中途社員を両方集めたワークショップを行い、それぞれの認識と活動を具体的に言語化、共有するアプローチが有効ではないか」「それによって、中途採用者の離職要因と、管理職や会社が中途採用を受け入れるうえでの課題が見えてくるのではないか」ということを提案した。その結果、
(6)「そのアプローチに興味があるので、企画書と見積もりを出してほしい」という発言を得た。
<プロセス3>企画提案
その日のうちに、実際の進め方や時間配分を説明する企画書を作成し、見積書と合わせてメールで先方に提出した。結果、翌日のメールで、
(7)本研修を、企画書の内容(ワークショップ形式)で発注したい
旨の連絡をいただいた。
以上で、具体例の記述は終わりです。
このケースでは、3つのプロセスがあり、それぞれ一場面ずつで構成されています。
その中で、成果(行動の結果)として得られたものが(1)から(7)までの7つありました。
これを、前回お話しした言葉でまとめてみましょう。
最終成果は(7)の『受注確定』です。
中間成果として明確なのは、(6)の『顧客の興味獲得』でしょう。
一方、(1)から(5)の「情報」は、一見、成果に直接つながらない意味のないものに見えます。前回記載した二つ目の注意点は、まさにこうした『一見、成果と関係がなさそうなもの』が、本当に関係がないのかを、注意深く検討する必要がある、ということなのです。
今回の件で言えば、以下のように分析されます。
(1)と(2)で顧客の目的や課題認識をきちんと理解した。
その顧客の認識が『事実』か否かを確認するために訪問した結果、『事実ではない』と結論づけたのが(3)から(5)です。
その結論があったからこそ、まずは『事実関係を把握しよう』ということで、ワークショップという提案につながり、それが(6)と(7)につながった。
このようにつなげてみると、一見無駄としか思えないような活動や、明らかに失敗という場面が、意外と何らかの形で成果につながっていることが良くあります。
ただし、つながっているのは、成果の再現性が高い人であることが多く、そうでない人の分析をすると、どうやってもつながらない(一つ一つの行動に関連性がなく、場当たり的になっている)こともよくあります。
ですから、無理やりつなげようとする必要もありません。肝心なことは、『成果への道筋』ですので、それを見落とさないように、しっかり分析をして、つながっているのかいないのかを、念入りに検証することが大切なのです。
成果のつながりを整理したら、あとはそれぞれの成果につながった活動を行動発生過程に沿って整理していきます。(つづく)