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コンピテンシー実用講座

(6)コンピテンシーレベルに関わるよくある質問 ①コンピテンシーレベルはマックスをとる(つづき)

前回、複数の場面で複数のレベルが確認されたとき、その『人財』のレベルはどのように判定されるのか?というよくある質問について、その回答を述べました。

 

結論を言えば、マックスをとります。

なぜならば、私たちの日常の過半はレベル2.0や2.5で成果を出すことができるからです。

レベル3.0以上が求められるのは、それでは対応できないような波風、つまり問題や高い成果要求が生じたときなので、その時にしっかり3.0以上が出せているかどうかが、その人の成果の再現性を示します。そう考えるので、コンピテンシーレベルはマックスをとるのです。

いざというときの、その人の対応力。それがその人のレベルを示します。

 

しかし、この『コンピテンシーレベルはマックスをとる』という原則が通用しないケースも当然あります。それが今回のテーマです。

前回のケースで考えてみましょう。3つの場面があって、それぞれ2.0、3.0、2.0という人がいます。普通に考えれば、マックスをとって、この人は3.0だと判断してもよいでしょう。

ところが、その2.0の実績が、こんな内容だったらいかがでしょうか?

 

マニュアル通り、手続き通りに行うと1週間かかる作業があったとします。特に波風、異常が発生していない時なら、マニュアル通りに実行して1週間で終えれば、レベル2.0ということで特に問題がありません。

ところが、この作業について、お客さまが、

「なんとか6日間で終えられないか?」

と、いうご要望を提示しました。このような要望はよくあることで、決して不可能なことではありません。

このような要望がよくあるということを知っており、経験していれば、レベル2.5を発揮してなんなくクリアできる内容です。

ところがそこで、

「いえ、これは1週間かかる作業ですので、6日で終えることはできません。」

と、杓子定規に言い張り、お客さまが

「前の担当者はやってくれたよ?」

とまで言っているのに、

「いえ、それはできません。」

などと言って、結果的にクレーム騒ぎに発展してしまった……。

 

この場合、明らかにこの人は、本来発揮することが求められていたレベル2.5すら発揮できていないということになります。

『コンピテンシーレベルの判定はマックスをとる』という原則は、あくまで、

「必要がないとき、つまりなんの波風も立っていないときに、あえてレベル3を発揮しなくても成果は出る。」

という前提のもとに成り立っています。しかし、

「波風、異常が発生している、つまりレベル2.5や3.0が求められているにもかかわらず、柔軟に対応する必要性に気づけず、レベル2.0で対応してしまった。」

と、いうことであれば、この前提が崩れています。

この事例で言えば、この人は、レベル2.5すら発揮できないことがあるという、そのくらいの成果の再現性の人だ、という判断になります。したがって、レベル2.0という判定が妥当ということになるでしょう。

 

複数の事例を検証し、レベルのバラツキが、

「必要性が発生していたのに、その場面で求められるコンピテンシーを発揮することができていなかった。」

と、いうことであれば、その時はマックスをとるのではなく、

「成果の再現性が不安定である。」

と、いう判断を下して、その人の成果の再現性に見合ったレベルを人財レベルとします。

 

なお、このとき、それこそ杓子定規に、

「一回でも、発揮できていない事例があったら、人財レベルの判定を下げなければ!」

などと、考える必要はありません。

あくまで、その人の成果の再現性を考えます。

「大抵の場面で、レベル3.0が発揮できていた。発揮できていなかった少数事例は、ちょっとした油断やケアレスミスによるものだった。本人も自覚していて、それ以降はそういうミスが起きないように注意していて、再発していない。だから、来期は同じような失敗をせず、安定的に成果を出してくれる可能性が高いだろう。」

こんなふうに考えられるなら、その人はレベル3.0でいいのです。

 

なお、たとえば営業職であれば、顧客の得意不得意といった理由による、『レベルのかたより』というものが生じるケースがあります。

 

「Aさんは、ある特定の顧客、ある特定の分野についてなら、レベル3.0が発揮できる。ところが、それ以外の、多くのお客さんにはそれができなくて、レベル2.5や2.0で対応してしまう。

発生頻度は3.0がたくさんあって、2.5や2.0は少ないけど、それは得意なお客さんのところばかりに行き、苦手なお客さんを避けているからだ。」

 

もし、こんな人がいたら、その人の営業としての成果の再現性はいかがでしょうか?

営業として、安心して仕事を任せ、成果を期待できるとは言い難いでしょう。この場合も、成果の再現性が不安定であるという評価をして、その人がどのお客さまにも安定的に発揮できるレベルをもって、人財レベルとしたほうがいいでしょう。

 

このように、日々のコンピテンシーの発揮レベルを、人財レベルに結びつける時には、複数の実績を具体的に見て、

「その人の成果の再現性は、どの程度か?」

というように、基本に立ち返って判断してみてください。