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コンピテンシー実用講座

(5)コンピテンシー分析の基礎 ④コンピテンシーレベル2

<レベル2>

コンピテンシーレベル2は、レベル1の状態で何回か仕事をすれば、普通はほぼ自動的に到達するレベルです。

行動発生過程で言えば、『行動』を自分で起こすことができるレベル。他の人から、

「いま、これをやって。」

と、言われなくても、自分で、

「いま、これをやらなければ。」

と、気づいて、動き出すことができるレベル。アニュアルを見なくても、

「まず、電源ボタンを押して、カーソルが点滅する画面が出てきたら、start:/msdosって打ち込んで……」

と、操作を進めていけるレベル。

つまり、レベル2とは、『知識』を身につけ、その知識を運用できているというレベルを指します。レベル1は、この知識がまだ頭に入っていないので、指示やマニュアルを必要とする。何度か繰り返して、知識を記憶したら、普通はレベル2になるわけです。

だけど、レベル2は行動発生過程の上流、つまり状況を認識して、意図を持ち、やり方を考えるというプロセスについて、自力でなすことができません。あくまで知識として覚えたことを、適用することができるだけで、自ら考え出すことはできません。

 

成果の再現性という視点から、このレベル1と2を比較すると、レベル1とは、

「成果の再現性がない。ゼロ。」

と、いうことになります。自らの力で成果を生み出す力がない。口頭であれ、文書であれ、指示を必要とする。成果の再現性は、指示をする人にあるのであって、その人にあるわけではない。

これに対して、レベル2は、

「限定条件付きで、成果の再現性がある。」

と、いうレベルです。その限定条件とは、

「平常時なら」

と、いう条件です。

平常時とは、

「何の問題も、異常も、イレギュラーもない。全く波風が立っていない状態。」

と、いう意味です。こういう時は、教わったやりかたを、そのまま実行していれば成果が出ます。

逆の視点から見れば、レベル2は、

「異常時」

には、自らの力で成果を出すことはできません。異常時とは、

「いつもより短い納期を求められる。」

「いつもより高い品質を求められる。」

「Q&Aに書いていないような、まったく新しい質問をされる。」

「新たなリスクが発生する。」

のように、その人の『知識』が適用できないような事態です。このようなとき、私たちに求められるのが、行動発生過程の上流部分、つまり、

「現状を正しく把握する(状況認識)」

「解決の方向性を考える(意図形成)」

「意図を実現する方法を考える(方法思考)」

という、まさに頭を使う部分です。頭を使うといっても、レベル2のような記憶力ではなく、考える力が求められます。

レベル2は、この自分で考えるというレベルに到達していない状態なので、異常が起きても対応できない。だから、こういう時、レベル2の人がとる行動としては、

「上司や先輩に、対処方法について指示をもとめる(相談する)。」

というのが、最適だということになります。

ところが、相談をきちんとできないレベル2の人は、異常時にもかかわらず、杓子定規に教わったことをそのまま適用しようとするので、場合によっては問題を起こします。

たとえば、

「マニュアル通りなら5日と書かれているが、それをなんとか3日でやってくれないか?」

と、お客さまから言われたときに、

「いえ、それは5日かかるものなので、無理です。」

と、かたくなに断ってしまい、

「あいつは融通が利かない!」

「あの会社は、顧客のために何とかしたいという意欲すら持っていない!」

などと、クレーム騒ぎに発展してしまう。

 

コンピテンシーレベルを正しく理解して、

「あ、この部下はレベル2だな。」

と、客観的に評価できたら、

「少しこまめに声をかけて、とにかく報告の頻度を上げさせよう。」

と、マネジメントのアプローチを調整するだけでも、ずいぶんとこうした弊害を防ぎ、組織の成果の再現性を高めることができます。

また、部下自身も、

「自分はレベル2だな。」

と、自覚すれば、

「何かイレギュラーが起きたら、勝手に自分で対応せず、かならず上司に相談しよう。」

と、気を付けることができ、それによって無用のトラブルを回避できるようになります。

 

このように、レベル2とは『知識』『記憶力』で仕事をしているレベルです。評価制度の文言で言えば、

「定型的な作業を、口頭や文書による指示がなくても、自己完結的に実施することができるレベル」

「基本的なことを、言われなくても実施するレベル」

といった内容になります。

 

次回はレベル3について、ご紹介していきます。