2018.10.09
コンピテンシー実用講座(前書き)
先週予告したとおり、これからこのスペースを用いて、コンピテンシーについて私の知る限りの知識を書きおろしていこうと思います。
最初にコンピテンシーに出会ったのは、ワトソンワイアットという会社でした。現在ビジネスブレークスルー大学大学院で教鞭をとられている川上真史先生と一緒にプロジェクトに取り組んでいく中で、どちらかと言えば「見て学ぶ」「体で覚える」という、昔ながらの徒弟制度方式で身につけたものです。当然のことながら、これから私が述べるコンピテンシーは、川上さんのコンピテンシー論に基づいています。
予め申し上げておかなければいけないのは、コンピテンシーは米国のマクレランド博士をはじめ、数多くの専門家たちが研究を深めてきた理論です。日本でも川上さんをはじめ、多くの先生方が普及をすすめてきました。
こうした背景を鑑みれば、コンピテンシーを学術的に理解し、説明しようと思ったら、心理学について深い造詣が必要となるのは間違いありません。
私はそのうちの一部を川上さんから教えていただきましたが、それにしても、ほんの一部でしょう。きっと、本当に理解するためには、もっと広範囲な知識体系を必要とするに違いありません。
また、本家本元のマクレランド博士もそうですし、その後、様々な先生たちがいくつものコンピテンシーに関わる論文をあげていますが、それらを概観すると、コンピテンシーという概念自体がまだまだ進化途上にあるようにも見受けられます。
ところが残念ながら、私は心理学について専門的に学んだ人間ではありません。学術的に正しくコンピテンシーを理解するならば、こんなコラムを読むよりも、川上さんの著書をしっかり読み込むことをお勧めしています。
では、何のために書くのか。
学術的に究めようとすれば、コンピテンシーは底なしでしょう。難解でもあります。ですが、人事や業務といった企業の現場で活用するために、そのすべてを理解しなければいけないというものでもないはずです(もしそうだとしたら、実用化は不可能でしょう)。
むしろ、その時々の目的に合致しない部分は取り除き、現場の一人一人が理解しやすいように整理したり、モデル化することが必要です。場合によっては本来の理屈から少し外れた解釈をしなければならないケースだってあります。
これからお伝えするコンピテンシーの説明は、あくまで組織人事、それから業務プロセスのコンサルタントとして、ビジネスの現場で川上さんから学び、その後、お客さまと一緒に制度設計や導入、運用に携わり、試行錯誤しながら組み立ててきた、
「コンピテンシーを実用するための説明」
です。
だから、タイトルも、『実用講座』にしました。
「コンピテンシーはわけがわからない。」
「コンピテンシーは難しくて、実用には適さない。」
と、コンピテンシーの有用性には気づきつつも、実用に躊躇している方、または実用に踏み込んだけれど、それがうまくいかず、悩んでいる方。そういった方々に、一つでも二つでも、実用して成功にたどり着くためのヒントを提供できれば幸いです。
まずは、コンピテンシーの入り口のハードルを少しでも下げること。それを、このコラム目的、成果として取り組んでみたいと思います。
株式会社ポテンシャル・ディスカバリー・コンサルティング
マネジメント・コンサルタント
坂本 健
※本編は明日からスタートします。もう少々お待ちください。