2017.04.18
自己規制
定年延長や働き方改革など、様々な企業の現場に直接影響するような大きな波が起きている。この波は良くも悪くも政府の掛け声からスタートしているので、トップダウンで強制力を持つわりには、具体性がないケースが多い。いわゆる丸投げというやつだ。ノルマのように上から命令されるが、上も下も具体的にどうしたらいいかわからない。
定年延長にしろ、働き方改革にしろ、大きなブレーキになっていると感じるのは、主に中高年層の自己規制である。自分で自分を規制する。しかも、それを「自分が勝手に規制しているだけ」ということに気がついていないのが、最大の問題だ。
定年延長への対応で言えば、人事も本人も、「50を過ぎてから新しいことに取り組むのは無理」とか、「いまさらITスキルを高めることなんてできない」とか、「中高年になると若手に比べてクリエイティビティが落ちていく」など、なんの根拠もなく可能性を縛る。それを縛ることを前提にして「どうしよう」と悩むから、答えが出ないのだ。ちなみに例に挙げた前提は、すべてやってみれば中高年の方が優れていることが多い。新しいことを立ち上げるのも、ITスキルを身につけるのも、クリエイティブな仕事も、中高年がやってみると意外とできるものだし、若手と競争させても勝つことの方が多い。単純な話、何れにしても過去の経験が生きるからだ。新しいことに取り組む時のアプローチ、失敗した時の復活のしかた、物事の習得の仕方などは、経験がものをいう。実際にやらせてみて、それが苦手だったりできない中高年がいたとしたら、それは年齢のせいではない。単純に、その人の仕事力が低いだけなのである。
働き方改革についても同様だ。こちらの場合は、プロセスの規制が多い。「このプロセスは削れない」と、勝手に思い込み、削らない前提で残業を削減しようとする。ぜんぜん「働き方改革」にならない。業務改善の基本は、活用する資源に応じて、プロセスのコンセプトそのものを見直すことにある。大量に人員がいるのであれば、その人員を最大限生かしたプロセスのあり方がある。同じ仕事でも少人数で取り組むのであれば、それに応じたプロセスのあり方がある。100時間の残業を前提として作り上げられたプロセスを、そのまま生かして残業をゼロにするというのは、そもそも考える手順がおかしいのである。
こうに決まっているとか、こうでなければならないという規制は、たいていの場合、誰に言われたわけでも、根拠があるわけでもないことが多い(法的な規制を除けば)。すべての制約や規制を取り除き、ゼロから考え直してみた方がいい。