2019.09.04
(9)コンピテンシーインタビューの技術 ⑥思考、行動を聴く
ここから先は、いろんなパターンがありますので、まずは一番の基本形からご紹介していきます。
取り組みや成果のところでも、繰り返し強調してきたように、私たちが陥るのは、ハイコンテクストとスキーマの罠です。
ですから、『成果につながった行動』を聞くときにも、情報の具体性を常に意識する必要があります。
順を追って見ていきましょう。
前回までに用いた『研修講師養成』というテーマで考えてみます。
この取り組みの成果は、
「部下が3つのプログラムを顧客に実施して、受講者アンケートに悪い点数がつかず、お客様からリピート契約をいただけるようになった。」
と、いうものでした。
まず、かなり前にご紹介したとおり、『基本形の質問』としては、行動を聞く質問は、
「その成果を出す上で、あなたが一番工夫したこと、または苦労して解決したことは、どのようなことでしたか?」
と、いう内容になります。
レベル3以上の行動を探す前提で、『工夫』や『苦労』といったキーワードを用いて質問するわけです。
すると、相手から、どんなこたえが返ってくるか。
「そうですね。特に苦労したのは、部下のスタイルというか、全体の印象が私と全く異なるので、自分のやり方をそのままやらせるのではなく、部下の個性に合わせた研修スタイルを作り上げるところです。工夫という意味でも、それが一番だったと思います。」
このくらい具体的に答えてくれることは、まれかも知れません。ふつうは、
「部下に合わせた研修のアプローチを考えるところを、特に工夫しました。」
くらいの内容でしょう。
しかし、いずれにしても、この情報だけでは不十分です。
では、ここからどのようにインタビューを進めていけばよいでしょうか?
ステップとしては、以下のように整理できます。
1)その工夫をした時期を特定する
2)日付レベルの具体性に落とし込む
3)その工夫をした対象、相手を特定する
4)工夫の内容を動作レベルに落とし込む
5)そういう工夫をしようと思った思考を聴く
6)その工夫、動作の直接的な結果、効果を聴く
一つずつご紹介していきましょう。
1)その工夫をした期間を特定する
行動や思考、判断など、プロセスの具体性を高めていくうえで欠かせないのは、時間と場所です。いろいろな時に、いろいろな場所で、同時に行動することは不可能ですから、必ず行動というのは特定の時間に特定の場所で行われるものです。
長期間にわたって、複数の場所で行動したということは、複数の行動をとったということになります。それをまとめて表現しようとすると、抽象的になる。
なので、これを分解するイメージです。
具体性を突き詰めようとしたらきりがありませんが、少なくとも日付が特定されるレベルの具体性まで絞り込むことをお勧めしています。
そこでまずは、最初に出てきた工夫の抽象度を確認するためにも、その工夫を行った時期を確認するわけです。
「部下に合わせた研修スタイルを構築したというのは、具体的にはいつ頃からいつごろにかけてのお話ですか?」
こんな具合です。これに対して、相手のこたえが、
「いや、そんなに長い話ではなく、7月の中旬、たしか20日か21日だったと思いますが、半日ぐらいでやりました。」
と、いうことでしたら、とりあえず具体性は十分と考えてよいでしょう。
もし、このこたえが、
「えっと、6月の最初ぐらいから初めて、完成したのは9月末くらいだったと思います。」
のように、複数の日をまたがる期間が出てきたら、この抽象度ではだめだな、と、考えて、具体性を高めるアプローチに取り組んだほうがいいでしょう。
まずは、工夫した時期とその長さを確認することで、話の抽象度を確認する。これが第一ステップでした。
次は、その具体性を高めるアプローチをご紹介していきます。