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コンピテンシー実用講座

(6)コンピテンシーレベルに関わるよくある質問 ③コンピテンシーは2軸で評価する

コンピテンシーレベルの評価のしかたに関わるよくある質問をご紹介してきましたが、最後にいちばんコンピテンシーの本質を問われる質問を取り上げたいと思います。
(最後に、と書きましたが、よくいただく質問は他にもあります。それらについては、制度設計のパートや運用パートのところで追い追いご紹介していきたいと思います。)

 

その質問とは、

「思考力を用いて、問題を解決したらレベル3.0ということだが、ちょっとした現場の問題を解決したレベル3.0と、全社に影響するような大きな問題を解決したレベル3.0では、全く違う。なのに、コンピテンシーレベルは同じ3.0になる。こんなに広い評価尺度では、意味がないのではないか?」
と、いった質問です。
単純化するならば、

「問題解決にもいろいろある。それを同一視して良いのか?」

と、いう趣旨の質問と言って良いでしょう。

 

この質問に対して、まず結論から言うと、回答は、

「いいえ。」
と、なります。簡易な問題の解決と、困難な問題の解決は、やはりレベルが違います。小さな範囲の問題解決と、大きな範囲の問題解決も違うでしょう。
しかし、コンピテンシーレベルは3.0です。

 

実は、コンピテンシーはかならず二軸で評価するのです。

この二軸のイメージを持てないまま、コンピテンシー分析を行おうとすると、

「なんだかみんな、レベル3.0だなぁ。」

となってしまい、結果的に、

「コンピテンシーは実務には使えない。」

という結論になってしまいます。

 

その二軸とは、どのようなものか。

まず、縦軸にコンピテンシーレベル、横軸に「仕事レベル」というグラフ様の絵柄をイメージしてみてください。
横軸の仕事レベルは、左に行くほど簡単で、単純で、小さくて、狭い。つまり、難易度の低い仕事。右に行くほど、複雑で、大きくて、広い。難易度の高い仕事。
これはそのまま、問題解決レベルや、キャリアの軸と捉えても良いでしょう。年功序列の日本の制度なら、一番左が新入社員がやるレベルの仕事、その隣が、2―3年目の若手がやるような仕事、その隣が5―10年目の中堅社員がやるような仕事。で、課長がやる仕事、部長の仕事、役員の仕事、最後に社長がやる仕事。こんなイメージ。
コンピテンシーを用いて人財分析をする場合には、まずその人の仕事を押さえる必要があります。なぜなら、コンピテンシーの本質は、
「この人の成果の再現性はどのくらいか?」
を、評価する視点だからです。
新入社員が行うような、単純で、小さくて、狭い仕事。その仕事において、その人はどのくらいの成果の再現性があるのだろうか?
課長が担うような仕事。複数の人財を統合し、課を経営していく上で直面する複雑な問題を解決する必要がある。そういう仕事で、その人には、どのくらいの成果の再現性を期待できるのだろうか?

 

 

このように、コンピテンシーレベルを評価、分析するときは、単純にレベルいくつ、というアウトプットではなく、
「こんなレベルの仕事について」
「このくらいの成果の再現性(コンピテンシーレベル)が期待できる」
と、いう形で、2軸の表現になります。
ですから、簡単な仕事をしている人のレベル3.0と、難しい仕事をしている人のレベル3.0は同一視しないのです。

なお、ここではわかりやすく説明するために、横軸の仕事軸について「仕事の難易度」だけで説明しましたが、実は横軸には必ずしも難易度だけではなく、仕事や問題の『種類』を設定するケースもあります。
たとえば、「他者に働きかけ、他者を巻き込み、組織的な成果を出す仕事」でレベル3.0を発揮できる人が、「単独で、個人の力だけで成果を出す仕事」でもレベル3.0を発揮できるとは限りません。

「専門性の高さ」が求められる仕事でレベル3.0を発揮できる人が、「交渉力の高さ」が求められる仕事でもレベル3.0を発揮できるとは限りません。
評価制度において、「等級」や「評価項目」と呼ばれるものが、まさにこの横軸なのです。

こうした等級や評価項目の設定と、それらとコンピテンシーの組み合わせ方については、いずれ「人事制度でのコンピテンシー実用」という趣旨のパートで取り上げていきたいと思います。

 

まずは、このくらいでコンピテンシーレベルに関わるよくある質問のご紹介を終わります。

次回からは、コンピテンシー面接(採用面接、評価面談)やインタビューなど、コンピテンシー分析に必要な「情報の獲得方法」について、ご紹介していきたいと思います。