2019.03.07
(5)コンピテンシー分析の基礎 ⑨コンピテンシーレベル3.5
<レベル3.5>
レベル2以上、レベル3未満と同じように、レベル3以上、レベル4未満という人もたくさんいます。
コンピテンシーレベルを人の成長、発展の過程と考えれば、当然、発展途上、成長途上の人がたくさんいるわけです。
むしろ、ぴったりレベル3とかぴったりレベル4という人のほうが、少ないのが当たり前なのかもしれません。
さて、レベル3.5です。
レベル3は問題解決力で成果を出す、レベル4は意図の持ち方で差別化する人です。
したがって、レベル3.5の要件は、成果基準よりも高い成果を出すが、成果限界を超えたり、基準そのものを引き上げたりするレベルではない人、ということになります。
これを、行動発生過程に沿って整理すると、以下のようになります。
1)成果基準(その状況で通常想定されるOKライン)よりも高い成果を出そうという意図を持つが、従来の限界を超えたり、基準を引き上げたりというような、状況変容レベルの意図は持たず、あくまで眼前の状況に対して、通常よりも高い成果を出そうとする
2)単に論理的に眼前の問題を解決するというレベルの思考力ではなく、通常よりも高い成果を出そうという意図を実現するために必要な、差別化につながる独自の工夫、アプローチを生み出すレベルの思考力を発揮する
3)そうやって生み出された、独自のアプローチを実行し、高い成果につなげることができるレベルの知識、スキルを有し、行動化できる実行力を示す
再現性をもって、通常よりも高い成果を出せるレベル3.5を発揮していると、他者との明らかな差別化に成功します。
「同じ仕事を頼むなら、あの人に頼んだ方が明らかに得だ。」
と、お客様や同僚、上司から高い評価を受け、いわゆる『ご指名』を受けるレベル。
レベル3.0以下の人たちは、「相手の期待(=OKライン)」をなんとかクリアしようとすることで手一杯です。
しかし、レベル3.5は、なんとかその上に付加価値をくわえて、相手を良い意味で裏切ろうとしますから、そこが評価されるわけです。
だけど、その成果はその人のみのもの。
それがレベル3.5の限界でもあります。
レベル4.0のように、仕事の条件、状況を変えて、
「今まで出せなかった成果を、出せる状態にする」
と、いうところまではいかないので、その恩恵を他者が享受することはできません。
また、レベル4.0のように状況を変えてしまえば、そこから先は同じ水準の成果を、さほど苦労することなく出せるようになるはずです。
しかし、レベル3.5は、制約条件は変わらないまま、都度の努力によって一過性の成果を出すだけです。
ですから、その後も同じような状況では、同じような都度の努力と、都度の創意工夫を繰り返し発揮し続けなければ成果が出ません。
そういう意味では、やはり成果の再現性はレベル4.0には至らない。
そういうレベルです。
とはいえ、
「あの成果は、あの人だから出せるんだよね。」
と、周りからは明確に差別化されますし、それによって、上述のように他者から指名されるレベルで信頼されるハイパフォーマーです。
レベル3.0に到達した人が、レベル4.0を目指すにあたり、まずは「高い意図を持つ」という訓練をするうえでは、レベル3.5というのは、通過点の一つとして登竜門になるのは間違いないでしょう。
これで、コンピテンシーレベルの尺度定義についての解説は終了となります。
次回は、コンピテンシーレベルの判定について、よくある質問、ご相談を紹介し、レベル判定にあたっての留意点をお伝えしたいと思います。