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コンピテンシー実用講座

(5)コンピテンシー分析の基礎 ⑧コンピテンシーレベル2.5

<レベル2.5>

 

 ここまでにご紹介してきたコンピテンシーレベルの5段階を簡単に整理してみましょう。

 

<レベル1> 

誰(何)かの作業レベルの明確な指示があれば、行動して成果を出すことができるレベル。

自身の成果の再現性はないレベル。

 

<レベル2

標準的、定型的な作業プロセスを知識として理解しており、それをそのまま実施して成果を出すことができるレベル。

平常時ならばという限定条件付きで、成果の再現性が期待できるレベル。

 

<レベル3>

その場の状況に応じたアプローチを自ら考え、判断し、それを実行して成果を出すことができるレベル。

問題や異常があっても、成果の再現性が期待できるレベル。

 

<レベル4>

その場の状況に組み込まれた制約条件を克服して、従来出すことのできなかった成果を出すことができるレベル。

従来よりも高い成果を、再現性を伴って創出できる状況を作り出すレベル。

 

<レベル5>

従来とは異なる全く新しい状況を構想し、実現することで、市場の価値観や評価尺度を作り変えることができるレベル。

新たな成果定義を作り出し、新たな市場を作り出すレベル。

 

このようにレベル定義を概観してみたときによくわかるのは、仕事を始めたばかりの人たちがレベル1,2のところにいて、一人前になるとレベル3。

レベル4になるといわゆるハイパフォーマーで、出現率が限られてくる。

レベル5になると、もう、ほとんど出てこないレベル。

こんなイメージを持っていただけるのではないかと思いますし、そのイメージは、それほど現実と変わらないと思います。

 

さて、このレベル尺度を人事制度や部下育成に活用しようとして、実在者に当てはめてみてください。

すると、すぐに多くの方がある悩みに直面します。

その悩みは、世の中には意外とこんな人が多い、という事実に起因します。

 

『完全に杓子定規で、知識を適用してばかりいるわけではない。それなりに柔軟に対応してくれる。だけど、じゃあ自らアプローチを考え、判断して問題解決ができている、というレベルでもない。』

 

つまり、レベル2は超えているんだけど、レベル3には到達していないという状態です。レベル2以上、レベル3未満。

実際、私がいままでにアセスメントをしてきた経験から見ても、そういうレベルの人がたくさんいます。

むしろ、すっきりレベル3という人よりも、このレベル2以上レベル3未満という人の方が多いのではないかと思います。

ですから、レベル2とレベル3という尺度では、あてはまらない、こうした人たちをどのように評価するかを定義しないと、採用にしろ、評価にしろ、育成にしろ、コンピテンシーを実用化することが難しくなります。

 

そこで、運用上、当然のように設定されるのが、レベル2.5という中間点です。

ただし、単純に、

「レベル2は超えてるけど、レベル3には物足りないから、レベル2.5にしよう!」

などという感覚的な運用をすると、結局のところ、コンピテンシーの導入目的である、客観性や論理性が失われ、みんなが安易にレベル2.5を使うという本末転倒な結果となってしまいます。

 

従って、レベル2.5をきちんと定義する必要があります。

 

レベル2.5とは、行動発生過程で言えば、『思考』で施策やアプローチを立案できない。一方で、知識をそのまま適用するのではなく、柔軟に対応することはできているという状態です。

この時、この人は何を用いて『柔軟に対応できている』のでしょうか?

『知識』と『思考』の間。柔軟性を担保するものとは?

 

それは、『経験』です。

型通りの知識ではなく、過去の蓄積から得られる知識。それが経験です。

十分な思考力、問題解決力には達していないんだけど、きちんと眼前の状況に合わせて柔軟に対応できている。

その時、その人に、

「なぜ、いま、あのような対応をしようと思ったのですか?」

と、その対応方法を思いついた思考プロセスをたずねると、

「以前、同じようなことがあって、その時に今のような対応をしてうまくいったから。」

「ああいうことは、よくあるんですよ。」

のように、過去の経験がヒントになり、それを少し応用して適用していることがわかります。

これがレベル2.5の正体です。

自分自身の『経験』でなくても、他者の経験、つまり『事例』を適用するのもレベル2.5と考えてよいでしょう。いわゆる前例主義。

 

マニュアルや指示など、定型的な知識をそのまま適用するのがレベル2.0

経験の蓄積を活用し、それを適用しながら柔軟に対応できるのがレベル2.5

 

なお、レベル2.5の成果の再現性は、レベル2.0と同様、限定条件付きで成果の再現性がある、という評価になります。

レベル2.0の限定条件は、『平常時なら』というものでした。

レベル2.5の限定条件は、『過去に経験のある状況においてなら』成果の再現性がある。

こういうレベルですので、やはりどんなに経験が豊富でも、未経験の問題をゼロベースで考えて解決できる、真の問題解決力を有するレベル3.0よりは下位に位置付けられます。

 

知識で仕事をする、レベル2.0

経験で仕事をする、レベル2.5

思考で仕事をする、レベル3.0

 

このように位置付けていただくと、客観性、論理性を保ちながら、中間点であるレベル2.5を運用していけるでしょう。

 

次回は、もう一つの中間点であるレベル3.5についてご紹介したいと思います。