2019.01.29
(5)コンピテンシー分析の基礎 ④コンピテンシーレベル2
<レベル2>
コンピテンシーレベル2は、レベル1の状態で何回か仕事をすれば、普通はほぼ自動的に到達するレベルです。
行動発生過程で言えば、『行動』を自分で起こすことができるレベル。他の人から、
「いま、これをやって。」
と、言われなくても、自分で、
「いま、これをやらなければ。」
と、気づいて、動き出すことができるレベル。アニュアルを見なくても、
「まず、電源ボタンを押して、カーソルが点滅する画面が出てきたら、start:/msdosって打ち込んで……」
と、操作を進めていけるレベル。
つまり、レベル2とは、『知識』を身につけ、その知識を運用できているというレベルを指します。レベル1は、この知識がまだ頭に入っていないので、指示やマニュアルを必要とする。何度か繰り返して、知識を記憶したら、普通はレベル2になるわけです。
だけど、レベル2は行動発生過程の上流、つまり状況を認識して、意図を持ち、やり方を考えるというプロセスについて、自力でなすことができません。あくまで知識として覚えたことを、適用することができるだけで、自ら考え出すことはできません。
成果の再現性という視点から、このレベル1と2を比較すると、レベル1とは、
「成果の再現性がない。ゼロ。」
と、いうことになります。自らの力で成果を生み出す力がない。口頭であれ、文書であれ、指示を必要とする。成果の再現性は、指示をする人にあるのであって、その人にあるわけではない。
これに対して、レベル2は、
「限定条件付きで、成果の再現性がある。」
と、いうレベルです。その限定条件とは、
「平常時なら」
と、いう条件です。
平常時とは、
「何の問題も、異常も、イレギュラーもない。全く波風が立っていない状態。」
と、いう意味です。こういう時は、教わったやりかたを、そのまま実行していれば成果が出ます。
逆の視点から見れば、レベル2は、
「異常時」
には、自らの力で成果を出すことはできません。異常時とは、
「いつもより短い納期を求められる。」
「いつもより高い品質を求められる。」
「Q&Aに書いていないような、まったく新しい質問をされる。」
「新たなリスクが発生する。」
のように、その人の『知識』が適用できないような事態です。このようなとき、私たちに求められるのが、行動発生過程の上流部分、つまり、
「現状を正しく把握する(状況認識)」
「解決の方向性を考える(意図形成)」
「意図を実現する方法を考える(方法思考)」
という、まさに頭を使う部分です。頭を使うといっても、レベル2のような記憶力ではなく、考える力が求められます。
レベル2は、この自分で考えるというレベルに到達していない状態なので、異常が起きても対応できない。だから、こういう時、レベル2の人がとる行動としては、
「上司や先輩に、対処方法について指示をもとめる(相談する)。」
というのが、最適だということになります。
ところが、相談をきちんとできないレベル2の人は、異常時にもかかわらず、杓子定規に教わったことをそのまま適用しようとするので、場合によっては問題を起こします。
たとえば、
「マニュアル通りなら5日と書かれているが、それをなんとか3日でやってくれないか?」
と、お客さまから言われたときに、
「いえ、それは5日かかるものなので、無理です。」
と、かたくなに断ってしまい、
「あいつは融通が利かない!」
「あの会社は、顧客のために何とかしたいという意欲すら持っていない!」
などと、クレーム騒ぎに発展してしまう。
コンピテンシーレベルを正しく理解して、
「あ、この部下はレベル2だな。」
と、客観的に評価できたら、
「少しこまめに声をかけて、とにかく報告の頻度を上げさせよう。」
と、マネジメントのアプローチを調整するだけでも、ずいぶんとこうした弊害を防ぎ、組織の成果の再現性を高めることができます。
また、部下自身も、
「自分はレベル2だな。」
と、自覚すれば、
「何かイレギュラーが起きたら、勝手に自分で対応せず、かならず上司に相談しよう。」
と、気を付けることができ、それによって無用のトラブルを回避できるようになります。
このように、レベル2とは『知識』『記憶力』で仕事をしているレベルです。評価制度の文言で言えば、
「定型的な作業を、口頭や文書による指示がなくても、自己完結的に実施することができるレベル」
「基本的なことを、言われなくても実施するレベル」
といった内容になります。
次回はレベル3について、ご紹介していきます。