2017.07.12
『実現性』の良し悪し;
先々週、新規事業がうまくいかない原因の二つ目、「レベル3」の人材という話に触れて、つづくとした。特に説明もせずに終えたが、基本的にはコンピテンシーのレベル3を意味している。(コンピテンシーにもいろいろあるが、私は川上真史さんのコンピテンシー論に基づいている)
レベル3とは簡単に言えば、「都度の状況に応じて柔軟に判断、対応し、問題を解決して成果を生み出すことのできるレベル」となる。問題解決力を有するレベル。決して低いレベルとか、悪い人材という定義ではない。本来は、問題解決力があり、成果の再現性の高い、戦力として成果創出の核を担う人材レベルである。が、どんなことにも表裏があるように、このレベルの人材が悪い影響を与える場面がある。それが新規事業開発なのである。
レベル3の定義における「判断」とは、「その場の制約条件の範囲内で、もっとも高い成果を生み出すためのアプローチ」を取捨選択することを指す。制約条件を超える意図をもち、制約条件を打破して、その場の限界を超える成果を生み出した時、それはレベル4となる。レベル3は「可能かどうか」で判断し、レベル4は「できるかどうかではなく、やるべきか、やりたいか」で判断する。
新規事業というテーマを、レベル3の人材ばかりで話し合うと、どうしてもこの「できる限り」「制約条件の中で」という限界に突き当たる。レベル3の仕事の仕方が染みついていると、どうしても、「実現性が低い=悪い判断」という呪縛にとらわれる。そもそも新たに何かに取り組もうと思えば、「確実」などということはあり得ない。同時に、他社が直面しているような制約条件を乗り越えないかぎり、後発で何に取り組んだところで、芽が出る可能性は低い。(その上のレベル5がいれば、そもそも全く異なる状況を想定するので、競争すら発生しないアプローチを取るのだろうが、その場合は、やってみるまでは実現性などまるで感じられないだろう。)
レベル3の人材が何十人集まっても、この垣根は超えられない。逆に、レベル3がたくさんいればいるほど、せっかくのアイディアを「現実性が」「確実性が」という言葉で潰していく結果となる。
新規事業を立ち上げるのに必要なのは、大人数の体制でも、多額の資本金でも、ましてや過去の経験や知識の膨大さでもない。少数でも良いのでレベル4以上の人材を投入することなのである。