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今日の一言

ビジネスモデル?; 

新規事業がうまくいかない。もしくは、そもそも新規事業が立ち上がらない。そういうご相談が、年に一度か二度、思い出したようにやってくる。なぜ、それが戦略系のコンサルタントでなく、業務や人事という現場のコンサルタントである私のところにやってくるのかは、よくわからない。
マーケティングや戦略立案の専門家ではないので、主に、企画から意思決定に関わるプロセスと、組織や人事などの体制面からアプローチしたいというときにやってくるのだろう。だから、そういう期待にこたえる形で分析し、改善策を立案する。
そこで新規事業という課題を俯瞰した時に、必ずと言ってよいほど出てくる「うまくいかない原因」が二つある。
一つ目は、そもそもビジネスモデルという言葉の定義があいまいであること。言い換えれば「新規事業」の成立要件がはっきり定められていないことである。「なんでもいいから、アイディアを出せ。」
二つ目は、「実現性」や「現実的」という評価尺度で新規事業案をつぶす『レベル3の人材』が、新規事業開発のイニシアティブを握っていること。これらの人の特徴としては、完璧を求め、高い成果を求める割に、リスクを嫌う。そもそも新規事業開発という取り組みと人材要件が、真っ向から矛盾しているケースが目立つ。

一つ目のビジネスモデルの定義。これについては私も調べてみたが、いろんな人がいろんな意味合いで使っているから、何が正しいという正解はない。だけど、業務や人事という世界にどっぷりつかってきて、数多くのハイパフォーマーのお話を伺う機会をいただいてきた私が思うには、「商品のすばらしさ」や「過去にないサービス」を考え出すことも大事かもしれないが、それ自体はビジネスモデルとは言わない。少なくとも過去に出会ってきたハイパフォーマーは、そういう商材アイディアではなく、「課金のしかた」と「収支構造」をビジネスモデルと呼んでいた。つまり、「誰から、どういう名目で、いくらくらいお金をとるか」という課金のしかた。同時にそれが払ってもらえそうかという、成立可能性がまず一番。それから、そうやって入ってくるお金に対して、経費がどのくらいかかるか。利益率がどのくらい見込めるかという収支構造。この両方について、見通しを立てることをビジネスモデルの構築と呼ぶのである。たとえば、キュレーションメディアを立ち上げようと考える。これ自体はビジネスモデルではない。ただのビジネスアイディア、商材である。ビジネスモデルといった場合、じゃあそのキュレーションメディアを使って、どこからどういう名目でいくらくらいのお金をとるのか。そこら中の企業がやっているように、「広告費」という名目で企業に課金するのか。それとも、ユーザーに対して購読料や年会費という形で課金するのか。または、全く違う相手に、違う名目で課金するのか。この課金の在り方を考えるということは、そのままその新規事業が誰に対して、何を価値として提供するのかを定義することに等しい。最近、キュレーションメディアが流行っているから、わが社もやろう。これを新規事業開発と考えてはいけないのだ。同じことをやっていても、どこで差別化し、どこで価値を出すと、どこからお金がとれるのか。それがビジネスモデルなのである。もし他社と同じようなことをやるなら、収支構造のほうで、他社よりも圧倒的に安いコスト、安い価格でできる仕組みを作り出すというアプローチもある。このように、「課金のしかた」と「収支構造」で、何らかの差別化が効いて、「これならもうかる」という理屈を構築できていない状態では、ビジネスモデルとは言えないのである。
商材のアイディアではなく、課金と収益の構造。そこにフォーカスして検討すると、まずは新規事業開発らしい議論を始めることができる。

二つ目の、新規事業をつぶす『レベル3の人材』。これについては、次回テーマで記述したい。(つづく)