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今日の一言

働き方改革; 

『働き方改革』という言葉が、ほとんどのクライアントから出てくるようになった。ここにきて、まるでお尻に火がついたような勢いである。私は業務と人事の二つの領域を扱っているが、たいていのお客さまにおいてはどちらかの顔しか見せていない(見せているけど、認知されない)ので、人事コンサルタントと認識されていると、女性活用や、職種別または地域別のコース別人事、またはこうした働き方改革に合わせた評価項目の修正といったご相談をいただく。一方で業務改善のコンサルタントとして認識されていると、残業削減とそれに絡めてフレックスタイム、フレックスロケーションという話が出てくる。
いずれの方面からのご相談にしても、最初の企画提案段階でかなりの時間がかかる。障害は二つ。
一つ目の障害は、そもそも「働き方改革」で何をどう改革し、それによって何を実現しようとしているのかという「ゴール・イメージ」が不在のまま、方法論だけが承認されてしまっているという状況である。たとえばコース別人事を導入する。これだけが決まっている。だけど、それを何のために、どのような効果、成果を得るために行うのかという目的が、ないとは言わないまでも、かなりあいまいだったりする。女性活用にしても同じだ。女性活用がうまくいっている企業では、「女性が主体的に活躍できる」ということが、ビジネスにおいてどのような効果と影響をもたらすのか、という成果イメージがはっきり認識されている。同様に、業務コンサルティングにおいても、目的や期待効果があいまいなまま、フレックスタイムやフレックスロケーションにするための業務フローをつくろうという方針だけが決まっていることが多い。
二つ目の障害は、分野の垣根である。「働き方改革」をきちんと実現し、定着させようと思うと、業務と人事の両面から手を付けていくことが不可欠だ。ところが、業務改善は現場の領域で、人事制度は人事部の領域。お互いに手を出せないというケースが多い。人事のご相談をいただいて人事部に行き、「評価制度を見直しても、現場の業務が変わっていなければ、絵に描いた餅ですよ」と働きかけると、「現場を動かす力はない」という。一方、業務改善のご相談は現場の方から受けるが、この方に「業務を改善しても、それによって何が評価されるのかとか、キャリアにどう影響するのかというような評価、処遇面を一致させていかないと、衛生要因(不満・不信・デモチベーションを抑える要因)が満たされず、不満が出たり、後戻りしてしまったりしますよ」と、働きかけると、「それは人事の領域だし、全社的な話になってしまうから、手を付けられない」という。
結局のところ、「働き方改革」を個別の部署単位で検討するからこうなる。部門横断的に全体の整合性を考えながら取り組んでいける体制を組めていればいいのだが……そこまでの気合と覚悟で取り組むほどには、この「働き方改革」は浸透していないのである。
このような制約条件の下で、働き方改革を実現させるためには、部門の垣根を越えて積極的に働きかけ、様々なステークホルダーを巻き込んでいけるようなパワーを持った人が必要になる。実際、そういう人が音頭を取って取り組みをスタートさせていくと、結果的に全社的な活動へと発展していき、目に見える成果につながっていくことが多い。良くも悪くも属人的。それが現在の「働き方改革」の実情とも言える。