2017.03.07
目標のない仕事?;
「目標管理って、すべての組織に当てはまるわけではないですよね?」
と、いう質問は、人事や業務のコンサルティングをしていると頻繁に寄せられる。そのたびに、「そんなことないですよ。すべての組織に当てはまると思いますよ」と、お答えすると、「そんなことはない!」と、激昂されることもある。なので、そのQ&Aを冷静に文章で再現してみたい。
Q「目標管理って、すべての組織に当てはまるわけではないですよね?」
A「そんなことはないですよ。すべての組織に当てはまると思いますよ。」
Q「だけど、営業とかと違って、成果がはっきりしない仕事だってあるじゃないですか。」
A「そんなことないと思いますよ。どんな仕事でも成果ははっきりさせたほうがいいですよ。」
Q「経理や人事で、事務手続きを行うだけなのに、どうやって成果をはっきりさせたらいいんですか?」
A「普通に考えたらいいんじゃないですか?
Q「?」
A「じゃあ、経理って誰がやっても同じ結果になるんですか?」
Q「当り前じゃないですか。人によって数字が変わったらおかしいですよね?」
A「じゃあ、経理は全員、新入社員でいいってことですね?」
Q「そんなわけないでしょう。新人にやらせたら、ミスをしたり、時間がかかったりして、大変なことになる。」
A「じゃあ、ミスをしないこと、時間をかけないこと。それが成果じゃないんですか?」
Q「なるほど。でも、それだと減点しかなくて、加点を付けてあげられないですよね。」
A「質問のテーマが変わりましたね。まず、成果はあらゆる仕事ではっきりさせたほうがいい。ここはいいですよね。じゃあ、加点があるかないか。言い換えるとプラスがあるかないかってことですが、それは、組織がプラスを生み出そうとしているかどうかによるんじゃないでしょうか。」
Q「どういうことですか?」
A「あなたの経理部で、いまよりもっとよくしたいことって何ですか?」
Q「いまより? いや、経理ですから、ミスなくちゃんと決算ができればいいんですけど。」
A「じゃあ、今の状態が完璧ってことですか?」
Q「いや、そんなことはないですよ。若手はまだまだミスが多いですし、何より残業が多い。」
A「で、それをどうしたいんですか?」
Q「ミスも残業もゼロにしたいですね。」
A「できそうですか?」
Q「いや、難しいですね。ミスはゼロが理想だけど、実際にはベテランでもちょっとしたミスはある。決算の数字に影響するようなミスを防げればいいかな。残業は40時間に収まればいいほうでしょうか。今は毎月80時間くらいになってますから。」
A「じゃあ、それが目標で、細かいのも含めてミスがゼロになったら加点、残業も40時間を下回ってゼロになるところまでが加点って感じになるんじゃないですか。」
成果は売上とか利益とか、そういうプラス方向ばかりではなく、ミスを無くしたり、コストや時間を減らすといった指標も成果である。仕事の成果をどのような指標で測るかは、ひとえに上司の裁量による。仕事の要件定義にも相当するので、成果を定義しないということは、仕事の定義をしていないことに他ならない。また、加点幅が生まれるかどうかは、「現状よりもよくしたい」という明確な課題認識を組織が(=上司が)持っているかどうかで決まる。と、いうことは、そもそも冒頭のような質問をしている段階で、その人は上司として重要な役割を果たすことができていないということなのである。
目標設定ができない仕事なんてない。目標設定できない(またはしない)仕事があるとしたら、それは単なる趣味なのだと思う。