2016.06.14
傍若無人:
傍若無人という言葉は、なんとなくイメージが悪い。この言葉の出所を調べてみると、弘法大師空海に行き着く。その意図を読み取ってみると、詩作や創作に当たっては「傍に人無きがごとく(若く)あれ」ということらしい。詩や文書の達人と言われた空海ですら、そう自分に言い聞かせなければならなかった。読者がどう思うか、周りがどう評価するか。そんなことを気にしていたら、面白みも深みも無い、つまらないものが出来上がっていく。だからこそ、傍若無人。傍に人無きがごとく、人の評価を気にせずに、目の前のものを磨き上げることに集中しろ、と。
仕事でも同じようなことを聞く。何か新しいことに取り組んだり、世の中に無いものを提案しようとするとき、「評価されるかどうか」を気にしていると、なんの変哲も無い、つまらないものになっていく。マーケティングの限界とも言えるもので、ニーズを徹底的に調査して作り上げることが良い場合もあれば、むしろニーズなど徹底的に無視したほうがいいこともある。業務や組織の改革でも、みんなの意見を聞くことも大切だが、時にはそうした声にとらわれず、最も正しいと信じる方向に全力で突き進まなければ、成果が出ないこともある。
組織が大きくなればなるほど、周囲の声に耳を傾けたほうが結果的に楽だ。だからこそ、傍若無人というスタイルを意図的に取り入れることが、差別化の源泉となり、エンジンとなるのではないか。
傍若無人という言葉を、悪者扱いしてはならない。