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今日の一言

受容と共感のそのあとは?; 

前回の「耳を作るプロセス」を読んでいただいた営業のハイパフォーマーの方々と、「そのあと」のアプローチの話で盛り上がった。せっかく相手が聞く耳を持ってくれたのに、それをつぶしてしまう若手が多いのだと言う。聞く技術である、受容と共感のプロセスの後で、営業では発信というプロセスが不可欠だ。その部分の話。

「相手のニーズや意見を丸呑みできるときはいいんだけど、そうじゃないことが多い。耳を作る必要があるってことは、言い換えれば相手が耳にしたくないようなことを言わないといけないときなんだよね。」

まさに、その通り。例えば、相手の要望に応えられないとき。

「それは無理ですって言っちゃったら、それで終わりだよ。」

それはそうだ。そこで、耳を作った後のアプローチが重要になってくる。様々なテクニックの話で盛り上がったが、大別すると二つのポイントにまとめられた。

一つ目は、相手の言い分をかなり細分化してとらえること。一見、無理難題に見えても、要素に分解すると否定すべき要素の数はそれほど多くないことが多い。インパクトの問題はあれ、肯定できる要素と否定しないといけない要素の個数の比率でいけば、肯定できる要素のほうが多いのが普通だ。

「これとこれとこれは大丈夫ですって、まず言えばいいのに、いきなり”全部無理です”的なこと言われたら、そりゃ、相手も引くよね。」

二つ目は、そうやって肯定したあと、「できない部分」を相手に説明するときのアプローチだ。端的に言えば、なぜできないのか、ではどうしたらよいのかというように「理由と対案」をきちんと説明すること。その時にコツがある。

「できない理由を、相手のために組み立ててあげないと。」

できないものはできない。だけど、相手のために何とかしてあげたい。そういう考え方で理由と対案を考えられるかどうか。印象的なのは、

「自分を守るための理屈を作り始めると、たいがい相手の耳が閉じてしまう。」

と、いうセリフ。なるほど確かに相手が無理難題を吹っかけてくると、のちの問題を考えてつい守りに入りがちだ。しかも、相手が尊大で高飛車な態度をとってくると、なおさらそういう姿勢に陥りやすい。そこで卑屈にも臆病にもならず、それでも「なんとか相手のためにしてあげられることはないか、この制約条件の中で、相手にとって一番いい落としどころはどのあたりか」と、相手のためにという視点で物事を組み立てていくことができれば、相手との関係が変わってくる。

「相手と向かい合って交渉しているイメージになったら、大体うまくいかないんだよね。交渉とか折衝がうまくいくときって、こっちが一生懸命考えて提案しているうちに、相手が一緒になって、じゃあこういう形ではどうよ?って考えてくれる状態になったときなんだよな。」

紹介されたテクニックは、研修でもよくお話ししている『否定の三原則(=理性的・論理的・部分的)』に相当する。

だけど、営業に関わらず、言葉のテクニックというよりは、相手に対する気持ちの持ち方のほうが重要だ。そういう基本的なことを再確認させてくれる会話であった。