2016.03.01
場面特異性:
多くの企業で、今日から新卒採用の動きが本格化する。そして、来月の今ごろは新入社員研修の真っ盛りということになる。
毎年、新入社員研修のときに、多くの企業の担当者の方から「今年の新入社員は元気がない」という不満をお聞きする。で、「採用の時に能力だけでなく、そういうところも見ないと。どういう面接をすればいいか」という相談がついてくる。
そういう時に紹介するのが、場面特異性という言葉だ。能力や性格など、人間の特性は与えられた場面によって特異に発現する。出たり、出なかったり。出方が変わったり。友人同士ではすごく活発な人が、職場では大人しい。またはその逆のケースもある。そういうことは誰にでもあるし、当たり前と言えば当たり前だ。
場面特異性という考え方に立てば、面接で性格を見抜くというのは事実上不可能と言わざるを得ない。もしかしたらできるのかもしれないが、私はそれに成功している人を見たことがない。
その場で元気にハキハキ応える人がいても、それは面接という場面に適応するために訓練しただけかもしれない。面接ではぎこちなく元気ないように見えた人が、職場に入ってからものすごく元気に働くこともある(私は新卒の頃、そういうタイプだった)。そういう意味では、新入社員研修のときに元気がないということが、そのまま元気がない人だと判断するのも早計だ。研修という場面だから、学生の時の授業のように真面目に受けるという傾向が強まるだけかもしれない。
このように考えると、採用面接の、その場の表情やしぐさ、話し方など、リアルタイムで手にはいる情報を判定の材料にしない方がいい。それはあくまで面接の場面での傾向にすぎず、職場に入ってからもそういう人であるとは限らないのだから。
採用担当の皆さんはこれから3ヶ月間、激務が続く。それだけの労力をつぎ込むのだから、本当の意味で優秀な人材を採り逃さないためにも、性格の良し悪しではなく、学生時代の実績に注目して面接を行うことをおすすめしたい。
(性格の悪い人を採れという意味ではなく、性格がいいか悪いかは面接ではわからないという意味です。念のため。)