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自分の理解;

自己スキーマという言葉がある。簡単に言えば、自分に対する根拠のない思い込みのことだ。自分の性格や能力、嗜好など、さまざまな特性について、「自分はこういうタイプだ」と思い込む。それが正しく客観的かというと、そうでもないので、意外と外れていることが多い。

たとえば、私は研修の講師やコンサルタントという人前に出る機会の多い仕事をしている。で、それなりにそういう仕事をうまくこなしているから、普通にそれを繰り返していると、「自分は外交的で、社交的な人間だ」と思い込む。だが、時々における自分の考え方や休日の過ごし方を振り返ったり、心理学の教科書などを読みかじって、さまざまな指標を用いて客観的に振り返ると、実はかなり内向的であることに気づく。

私たちは、自分の特徴にあわせて行動を選択する傾向がある。たとえば、自分について「分析力が強みだ」と認識していれば、その分析力を仕事でできるだけ用いようとする。逆に、「わたしはコミュニケーションが苦手だ。対人関係が弱い」と認識していると、そういう場面をできるだけ避けようとするし、そういう能力を使わずに仕事をしようとする。上述のように、たとえば「わたしは外交的だ」という自己スキーマを持てば、そういう仕事をしようとする。

だから、スキーマで自分に対する理解を勘違いしていると、仕事の仕方を間違える。大して強くもないのに、「分析力が強みだ」と勘違いして、一生懸命分析力を使おうとすると、むしろ成果が出ない。本当はコミュニケーション力が高いのに、それを苦手だという自己スキーマを持ったがために、せっかくの能力が宝の持ち腐れとなってしまう。

自分がどういう人間か。雰囲気やイメージでなんとなく決めつけてしまうのではなく、事実関係で確認しながら、客観的に把握しておく必要がある。強いというならば、その能力を用いて最近どのような成果を出した実績があるか。弱いというならば、それが原因で問題を起こしたような事例があるか。そうやって、適宜その時々の自分の状態をチェックしないと、働き方を間違える。

特に、強み弱みというのは、成長や経験に応じて変化していく。何年も前に強いと思っていたことが、成長したり仕事のステージが上がることで通用しなくなることもある。逆に弱いと思っていたことが、さまざまな経験を積むことで、強みに転換されていることもある。

定期的に自分の「働く力」をチェックして、その結果に応じて働き方を最適化していくことが、キャリアを積み重ねていく上では欠かせないのである。