2016.02.16
研修効果は測れない?:
よく、研修を検討している顧客から、「研修の効果を測定して、フィードバックしてほしい」という依頼をいただく。すると、研修会社の営業は受講者のアンケートをとってフィードバックしたり、事後課題を出して上司の判子をとるといったことを提案する。顧客のなかにはそれでよしとする人もいる。しかし、多くの場合「それは研修効果ではない」と指摘して、「やっぱり研修の効果なんて測れない」と諦める。諦められない人のなかには、研修会社を「無責任だ」と責め立て、挙げ句の果てに「効果がわからないものに金は出せない」と言って、研修そのものに否定的になったりするケースもある。
考え方は人それぞれなので、とやかく言うつもりはない。ただ、目標管理や成果評価に携わってきた経験から言えば、測定できない成果はないし、成果を測定できない仕事など、仕事とは言えないということである。研修だって一緒だ。効果を測定できない研修があるとしたら、それは研修の設計自体に問題があるのだ。
上記のようなシーンで言えば、成果を測定したいと言っている顧客の側でも、そもそもその研修でどういう成果を出したいのかをしっかり言語化できていないことが多い。言語化していても、かなり抽象的で具体性に欠ける。成果を測定するということは、「目で見て確認できる」ということだから、少なくともそのレベルの具体性で成果を定義できていなければ(言い換えれば、そのぐらいの具体性で研修の目的を設定していなければ)、測定できるわけがない。おそらく、研修を提供する側も、その研修でどんな効果を産み出すことができるのかを、十分な具体性で言語化できていないのだろう。
仕事は成果を出すために存在する。成果を測定できない仕事があるとしたら、それは単に成果を意識せずに仕事をしているということにすぎない。あらゆる仕事において、一番最初になすべきことは、成果の言語化である。ところが往々にして、私たちはそれをおろそかにしたまま、プロセスや方法論にばかり議論を費やすことが多い。研修効果の測定という話は、仕事の仕方に関わる根本的な問題の、ほんの一例にすぎないのである。