2020.01.08
実用編(1)業務分析 ②高業績者インタビューの進め方(つづき)
(5)インタビューの実施
事前準備シートを入手したら、いよいよインタビューの実施です。
インタビューの基本形については、コンピテンシーの基礎でもお伝えしました。
コンピテンシー導入段階で行う高業績者インタビューは、その基本系とはかなり異なるアプローチを採ります。
高業績者インタビューの目的は、業務プロセスの理解とそのKey success factor(KSF)の抽出です。以前ご紹介した『人財の強みを見つけ出す』ためのインタビューとは趣旨目的が違います。
その違いを中心にしながら、業務分析段階で行う高業績者インタビューの進め方を紹介していきましょう。
強み、弱みを把握しようとするときと、業務理解を目的とした場合のインタビューの違いは、大きく分けて二つあります。それは、『省略』と『具体性の度合い』にあります。
今回はまず、『省略』について説明していきます。
コンピテンシーの基礎のところでご紹介したように、人財の強みを見出すときは、端的に言えば、強みを発揮したところだけを抽出して聞きだそうとします。そのため、キーとなる質問として、
「そこで、あなたが苦労したこと、工夫したことは、どのようなことでしたか?」
と、いう質問が多用されます。
わかりやすく言えば、『あなたがレベル3以上を発揮したのはどこですか?』という形で、業務よりもその人の活動にフォーカスして聞いていくのです。
しかし、しつこいようですが、ここで述べている高業績者インタビューは、コンピテンシーを導入する第一歩として、業務とそのKSFの理解が目的ですから、そのように一部に着目するわけにはいきません。むしろ、見逃しや取りこぼしがないように、もれなく聴いていくことのほうが重要になります。
なので、一つの業務の、一つの成功事例について、最初の場面からはじめて、一切の省略をせずに、最後の場面、つまり成果が出るところまですべて聞いていくことが大切なのです。
たとえば、契約内容をシステムに入力したとか、請求書を作って送付したとか。経費精算をしたとか、上司に報告したとか。そういう明らかにレベル1の場面も省略しない。そこで行われている行動を細大漏らさず、すべて把握していく。そうすることで、その業務の流れ、その業務の煩雑さ、その業務の規則やルール、そういったものをきちんと把握することが大切になってくるのです。
そうした高いレベルのコンピテンシーを求められないプロセスを省略すると、その後、そのインタビュー結果を基に制度設計や人財要件の定義など、実務に落とし込もうとしたときに、その見逃したプロセスが放置されることになってしまいます。
まずは、高業績者インタビューでは、一切の省略をしないこと。これが、コンピテンシーの基礎でご紹介したインタビュー技法との違いの一つ目です。
次回は二つ目の『具体性』について、紹介します。