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コンピテンシー実用講座

コンピテンシーの予備知識 ③報酬制度 (基本給と賞与)

③ 報酬制度

 

報酬制度は、大きく分けて基本給、業績賞与、手当の3つに分類して設計していきます。

 

基本給は外国でもBase Salaryと表現する通り、報酬の根幹をなすアイテムになります。基本的には等級制度に連動させます。職能給なら人財価値が、職務給なら仕事価値が高ければ高いほど、基本給も比例して高くなる。

基本給は、その人が今後、会社に貢献してくれる(=成果を出してくれる)という、未来の期待に対して支払う位置づけの報酬ですので、『投資的報酬』とも言われます。

 

職能給でコンピテンシー評価を導入する場合、コンピテンシーとは人財の成果を生み出す力そのものですから、当然、その評価結果と基本給の水準を連動させる必要が出てきます。

職能給であれば、コンピテンシー評価を入れたとしても、その評価結果に基づいて与えられる仕事が変わらない限り、基本給金額は変わらないということになります。

先に、役割給という仕組みを紹介しましたが、これが実態としては職能給になっていると書きました。これは、簡単に言えば『年度考課の結果によって、基本給を昇給、降給させている』という意味です。役割が変わらなければ、基本給が変わらないという仕組みになっていれば、それはまさに職務給です。

 

等級制度をどう作るか、それから評価結果を、基本給にどう結びつけるか。基本給の設計によって、制度の論理的整合性の大半は決まってくると言っても、過言ではありません。

 

業績賞与は一時的な処遇で、法的にも支給義務は明確には設定されていません。まったくあとくされがないという意味では、『精算的処遇』とも呼ばれます。

ですから、普通は業績評価(=過去の結果の評価)を賞与に反映します。

 

また、より直接的に成果に対して支払うインセンティブ(業績報奨金)や、定期的ではなく、決算の上積み分を還元する決算賞与というものもあります。これらも一種の業績賞与ですので、支給形態にとらわれず、『結果にどう報いるか』という視点で柔軟に検討したほうが良いでしょう。

 

ただし、ここで気を付けなければいけないのは、日本の企業の多くは、業績賞与の大半を固定化しているという点です。

たとえば、夏の賞与が基本給の3か月分とした場合、その8割くらいは支給が決定していて、残りの2割くらいのところが、業績評価で差がつくといったイメージです。

この場合、実態としては2割部分(標準賞与が3か月だとしたら、0.6カ月分)だけが、業績賞与であり、残りの部分は実質的には基本給だとみなしたほうが良いでしょう。

もちろん、万が一、会社の業績が著しく落ちた場合には、安全弁としてその8割部分をつかおうという発想で、あえて賞与の一部として支給しているのでしょう。ですから、別に支給区分を変えろという話ではありません。しかし、人事制度の設計と運用を検討するときには、固定部分と変動部分をしっかり切り分け、その意味合いを実態に即して定義、設計しておかないと、社員だけでなく、のちの人事担当者をもミスリードしてしまうリスクが高くなっていきます。