2020.02.25
実用編(1)業務分析 ②高業績者インタビューの進め方(つづき)
<価値あるコンピテンシーの抽出>
価値あるコンピテンシーとは、当然のことながら『成果につながる』という観点からの価値です。そのコンピテンシーがあるから、他者にくらべて高い成果を、高い再現性をもって出すことができている。一言で言えば、Key Success Factorとなるコンピテンシーです。
大きく分けて、三つのステップで行います。
①平均的業績者との比較
そもそも、高業績者という概念自体が平均との比較という相対的なものですから、当然のことながら分析においても相対比較を行います。
簡単に言えば、普通の人は同じような場面でどうしているのか。それと比較して、高業績者ならではの状況認識、意図の形成、思考プロセス、知識や技術はどのようなものか。
それを検索していきます。
ただし、ただ凡人と違うというだけでは、本当に価値があるかどうかがわかりませんから、そうした差別化された思考や動作が確認出来たら、『それがどのように成果につながったか』という形で、成果の因果関係を確認します。
たとえば、前回の例を抜粋してみてみましょう。
行動発生過程(1)
意図 : プログラムを提案するためには、目的や課題を理解することが必要と考えた。
行動発生過程(2)
意図 : 事実を知り、本当の課題が何かを知りたいと思った
結果 : はっきりした事実が出てこなかった
行動発生過程(3)
状況 : 電話ではこれ以上のヒアリングをしても事実関係はわからないと思った
意図 : 価値のある効果的なプログラムを組むためには、顧客が抱えている課題を正確に理解することが必要だと考えた
この後、顧客との打ち合わせの中で、『そもそも早期離職の原因が何か、事実関係を把握しなければ、何をやっても効果が期待できない』という提案をして、ワークショップ形式の提案につながっていきます。
この部分について、同じような場面での平均的業績者の思考と行動を追っていったときに、以下のような内容だったとします。
行動発生過程(1)
状況 : 『マネジメント力強化』の研修依頼をメールで受信した
意図 : できるだけ多くの提案をして、顧客の興味を引こうと思った
思考 : 特になし
行動 : 既存のプログラムの中から『マネジメント』に関係するものを4種類選び出し、企画書を作成して、顧客に提案した
結果 : 他社と似たような内容なので、選び難いと言われ、価格の値引きと、この内容が、どのように早期離職防止に効果があるのかを説明する追加資料を求められた。
この後、結果的に値引きをして価格で受注するか、または他社に何かいい要因があって(たとえば講師が同じ業界だからとか、そういう内容と関係のないことで)失注するといった結果になっていたとしましょう。
しかも、多くの平均的業績者が同じような意図(既存のプログラムを数打てば当たる方式)で活動しており、結果的に利益率が低かったり、当たるも八卦当たらぬも八卦といった、不安定な成果の再現性だったとしましょう。
このように、「普通はそういう時にみんなどうしているのか?」を確認します。
それに対して、「なるほど、高業績者はこんな考え方、こんなアプローチを採るから、普通の人よりも高い成果を、再現性をもって出せるのかぁ!」と、いう要素を見つけていく。こんなイメージです。
こうして差別化される高業績者のアプローチを抽出したら、つぎは、項目化というステップに進みます。