2019.11.06
実用編(1)業務分析 ②高業績者インタビューの進め方
コンピテンシー導入のための業務分析。まずは、王道(?)の高業績者インタビューを紹介します。
とはいっても、その方法は千差万別です。人事のコンサルティング会社によっても手法が異なるようですし(そもそも、コンサルティング会社によってコンピテンシーの定義や考え方もちがう)、コンサルタントによってもだいぶ異なります。
なので、ここから先の手法論は、あくまで私が過去に実施してきたものを整理した内容だという理解でお付き合いください。
(もっとも、そもそもここまでご紹介してきたコンピテンシーの考え方についても、会社や人によっては、異論のある人はいるでしょう。そういう意味では、この連載全体が、あくまで私個人の蓄積開示にすぎないという理解でお付き合いください。)
高業績者インタビューを行う手順は以下の通りです。
1)成果を定義する
2)高業績者を選抜する
3)インタビューの準備を依頼する
4)インタビューを実施する
5)インタビューの内容を整理する
それなりのボリュームですので、何回かに分けてご紹介していくことになります。
1)成果を定義する
当たり前のことですが、「成果をあげている人の仕事のしかた」を分析しようとするのですから、まずはそもそも「あげたい成果」を定義する必要があります。ところが、意外とこれが難しい。
営業ならわかりやすいでしょう。成果とは何か?と聞かれれば、「売上」「契約」「利益」といった具合に、成果を即答できる人はたくさんいます。
では、『経営企画という仕事の高業績者』を採用なり、評価なり、育成したいときはいかがでしょうか? 経営企画という仕事に求める、成果とは何か? と、問われて、営業のように即答できる人はどれだけいるでしょうか?
しかも、その成果というのは客観的、具体的に確認できなければいけないのです。
「経営に効果のある企画を出すことが成果だ。」
なんていう、抽象的な概念では、不十分。
「じゃあ、経営的に効果のある企画とは、なにを、どのような方法で確認して、それがどうなっていれば、どのくらい効果のある企画だという評価をするんですか?」
また、こんな議論だってでてくるでしょう。
「企画を出せば、経営企画としてはそれでおしまいでいいという理解でよいですか? それを採用させて、実行させ、成果を出すところは、”経営企画には関係ない”と切り離してよいということですね?」
これらの質問に即答できる経営者や管理職は意外と少ないものです。
このように、大きな企業ほど、分業化された個々の組織や業務の成果を定義するのは難しい。
しかし、コンピテンシーとは成果につながる力ですから、成果の捉え方を間違えると、ほぼ確実に失敗します。ですから、この『成果の定義』を妥協するわけにはいきません。
そういう意味では、「営業だから、売上が成果ってことでいいよね?」というように、わかりやすい職種だからといって気を抜くわけにもいきません。
たとえばですが、会社によっては、営業に「新商品開発のための顧客情報」を成果として求めることもあるでしょう。
または、販売後の定期的な点検業務を与えることで「故障率」を最小化するという成果を、営業に求めている会社もあります。
会社の最終的な利益を、どの組織がどのような役割を果たしながら作り上げていくのか。それをきちんと考えて、各組織、個々の人財の成果を定義しないといけません。
この組織全体の視点と全体のつながりを確認しないと、ポテンヒットが発生します。組織を個別に定義していると、会社の中から大切な役割、機能、成果が抜け落ちてしまって、そのために全体としての成果の再現性が担保されない。そんな事例もたくさんあるのです。
コンピテンシー導入に当たって実施する、『成果の定義』の方法は、大きく分けて2通りあります。論理的に定義する方法と、実績から定義する方法です。
論理的に定義する方法は、会計からアプローチする方法と、機能からアプローチする方法があり、これらを組み合わせます。
実績から定義する方法は、人事からアプローチする方法と、業務の現場からアプローチする方法があり、それを組み合わせて使用します。
次回から、一つずつ紹介していきましょう。