2019.08.21
(8)コンピテンシーインタビューの技術 ④成果の聴き方
コンピテンシーインタビューの最初のステップは、『取り組みを聴く』でした。
取り組みを一つ取り出すことに成功したら、次のステップは『成果を聴く』です。
成果を聴き取るうえで、私たちがもっとも気を付けなければならないのが、『ハイコンテクストの罠』です。
何度もお話ししてきたように、私たちはついつい抽象的に物事を捉えがちです。物体や、目の前で行われている動作など、目に見えるものならまだしも、『成果』というのは概念ですから、特に抽象的になりやすいものです。
さて、『取り組みの成果』を普通に質問すると、どのようなこたえになるでしょうか?
たとえば、
「経費精算の業務改善に取り組みました。」
と、いう取り組みが出てきたとします。そこで、成果を聞きます。
「経費精算の業務改善に取り組んで、どのような成果を出すことができましたか?」
このように質問すると、普通はかなり抽象的なこたえが返ってきます。
「業務効率が上がりました。」
こんな感じです。
コンピテンシーは成果の再現性を予測するアプローチです。
「ちょっとした成果を、高い再現性をもって出せる。」
と、いう人と、
「非常に高い成果を、高い再現性をもって出せる。」
のとでは、大違い。ですから、業務効率が上がりました、という程度の情報では、当然のことながら不十分です。どんな業務効率が、どのくらい上がったのかがわからないからです。その人の出した、成果の質や量がわからない。
コンピテンシーインタビューにおいて、十分な具体性で成果を聴くという場合、以下の二つの条件を満たすことが、一つの目安となります。
1)指標と水準が明確である
2)BeforeとAfterの変化が明確である
まず、指標と水準が明確であるという点について。
たとえば、上記の例でいえば、
「業務効率とは、具体的にどのような指標で評価しているのですか?」
と、聞きます。すると、
「経費精算にかかる時間です。」
と、なります。
「それが、どのくらいになったことが成果なのですか?」
というのが、水準。それに対して、
「一か月の経費精算を、2時間でできるようになりました!」
という、こたえが返ってくる。まずは、これで条件の一つ目、指標と水準が明確である、という点がクリアされます。
だけど、これだけでは、その成果がどのくらいすごいのかがわかりません。
そこで、二つ目の条件になります。
「あなたが取り組む前は、どのくらいかかっていたのですか?」
ふつう、成果を聴いて返ってくるこたえは、取り組み後つまりAfterのみの水準になります。だけど、成果というのは取り組み前、つまりBeforeとの比較なのです。たとえば、この質問に対して、
「2時間2分かかってました!」
というこたえがかえってきた場合と、
「16時間かかっていました!」
と、いうこたえがかえってきた場合とでは、その人の取り組みの成果って、ぜんぜん違いますよね?
このように、コンピテンシーインタビューで成果を確認する場合には、まず、指標を聴く。それから、水準については、必ずAfterの状態だけでなく、Beforeの状態も確認して、そのギャップを理解する。この点にご注意ください。
次回は、この『指標と水準』について、よくある質問(相談)をご紹介したいと思います。