2019.07.03
(7)コンピテンシーインタビューの基礎 ⑧自己スキーマ
今回は、前回からお伝えしている、『ハイコンテクスト思考の弊害』の二つ目になります。
この弊害は、コンピテンシー開発、人財開発という側面において、特に大きな障害となります。人の成長や変化を阻む。そういう問題につながります。
私たちが、日々の経験をハイコンテクストで(抽象的に)認識し、記憶に残し続けると、その弊害として『自己スキーマ』というものが発生します。そう。スキーマは、自分に対してもできてしまうのです。たとえば、
『私は外交的だ。』
『私は明るい人だ。』
と、いうように、自分の性格についてもできますし、コンピテンシーという点で言えば、
『私の強みはリーダーシップだ。』
『私の強みは分析力だ。』
というように、自分の強みに関わるものもあります。当然のことながら、逆のパターンで、
『私は、数字が苦手だ。』
『私は、コミュニケーション力が弱い。』
と、いうように、自分の弱みに関わるものもあります。
これらが事実ならばいいのですが、過去の、本当に一過性の、しかしながら強い経験や事例から、明確な根拠や論理もなく、ただ強くそう思い込んでしまう。そういうケースも多いのです。これが自己スキーマ。
この自己スキーマが、どのように私たちの変化や成長を阻むのでしょうか?
たとえば、みなさんが上司になり、部下を評価しなければならない立場だとしましょう。そして、その部下のBくんが、
「私は論理的思考力が強みだ。」
と、いう自己スキーマにとらわれているとします。すると、どんなことが起きるでしょう?
このスキーマに合いそうで合わない。そんな事実、事例が発生したとします。たとえば、
『お客さまの社員の1人から、“うちの会社の問題は、仕入先が少なすぎることだ”といわれたので、社長に対して“御社の問題は、仕入先が少なすぎることです”と、提案したら、まさにその通りだ!よくぞ、この短期間にうちの会社の本質的な問題をみつけだしてくれた!と、すごく感動してもらえた。』
こんな感じでしょうか。
結果としては、顧客の社長から手放しで褒められたので、素晴らしい事例に見えます。成果としては素晴らしいかもしれません。
しかし、そのプロセスをよくよく読むと、顧客の社員から言われたことを、そのまま社長に提案したら、たまたまヒットした。そういう事例です。どこにも論理的思考など使われていません。
なのに、”問題”とか、”本質的な”とか、”提案”といった、論理的思考力の研修でよく出てきそうな言葉がちりばめられています。
さて、この場合、「私は論理的思考力が強みだ」という自己スキーマを持っているBさんは、この事実関係をどのように認識するでしょうか?
長くなりましたので、次回に向けて宿題にしてみたいと思います。
この人が、評価面談で、自分が強みだと認識している『論理的思考力』について、上司から、
「なにか、論理的思考力を発揮して成果を出したという事例はありますか? 一例でいいので具体的に教えてください。」
と、インタビューをされたとしましょう。
このとき、Bさんの回答はどのような内容になるでしょうか?
ヒントは、スキーマの弊害の一つ目。
『スキーマに合うことを重視し、その他を軽視、無視する』
と、いう現象です。
それでは、次回もよろしくお願いします!