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コンピテンシー実用講座

(7)コンピテンシーインタビュー ②スキーマとは

コンピテンシーインタビュー にかかわらず、私たちが日常生活において陥りがちな2つの罠。
そのひとつめが、『スキーマ』という、私たちの脳みそに組み込まれたメカニズムです。
このスキーマ、私たちの脳みそが情報処理をしようとすると、無意識のうちに、自動的に働きます。

 

スキーマを心理学の教科書で調べてみると、

「思考の枠組み」
と、出てきます。(もちろん、教科書にもよりますが。私の手持ちの教科書にはそう書いてあります。)
本当はかなり根深い概念のようですが、私が理解できた範囲で簡単にご紹介していきたいと思います。

 

私たちの脳みそは、目や耳、鼻や口など、知覚器官から情報を入手すると、それを直接理解につなげる仕組みにはなっていません。

『理解』の一歩手前で、かならず『記憶のデータベースに照らし合わせる』という作業を行なっています。

 

たとえば、みなさんが「MBO」という言葉を聞いたとき、みなさんの脳みそはどのように理解するでしょうか?

表面意識的には、
「ああ、経営陣による自社買収のことね。」
というように、『MBO→買収』というかたちで、直接処理しているように感じるかもしれません。

しかし、実際には、みなさんの脳みそは『MBO→買収』の真ん中、つまり”→”のあたりで、この言葉を記憶のデータベースに照らし合わせているのです。

そのデータベースの中に、
「MBO=Management Buy Outの略。経営陣が自社の株式を買収する、または譲渡されることで所有権を獲得し、分離独立すること。」
というのがあって、
「ああ、MBOって、自社買収のことね。」
と、認識しているのです。

 

ところで、ここまで読んだ時に、「あれ?」と、思った方も多いのではないでしょうか。
『MBO』という言葉を見た瞬間に、
「ああ、目標管理のことね。」
と、認識した方も多いのではないかと思います。
その人は、MBOという情報を、自分の記憶のデータベースに照らし合わせた時に、
「MBO=Management by Objectives。目標を用いて、部下を方向付け、その達成過程に関与することで部下の自律的行動を育成、定着させていくマネジメント手法。」
なんていうデータが、検索結果としてヒットしたわけです。

 

このように、私たちは、どんな情報でも、その情報を認識するプロセス上で、データ検索、データベースとの照らし合わせを行なっています。
なお、このデータベース検索の結果、ヒットする情報が何もないと、脳みそはその情報を受け付けることができません。つまり、認識できない。

なので、MBOという言葉を見たことも聞いたこともない人は、MBOと言われると、
「なにそれ?」
としか、思いません。

 

この機能、ちょっと問題なのは、
「ああ、MBOって目標管理のことね。」
と、自分のデータベースから答えを見つけてしまうと、他の可能性に思考が及ばなくなるという点です。
「ほかにMBOってあるのかな?」
とは、なかなか考えないものです。
実際、私もバイアウトと目標管理以外の意味があるかどうかなんて、調べたこともありません。

 

スキーマとは、こうした記憶のデータベースの中で、『特に固定化したもの』と理解すれば、遠からずと言ってよさそうです。

(専門家のみなさんの中には異論があるかもしれません。しかし、ビジネスで活用したり、この後のコンピテンシーインタビュー を実用化するという目的からは、この程度の理解でいいはずです。)

 

非常に強いショックを受けた記憶や、何度も繰り返された経験があると、
「それは、こうに決まっている。」
と、強くデータベースの中に残ります。それが思考の枠組みになる。その枠組みに合わせて、なんでもかんでも理解しようとする。それがスキーマということになります。

 

このスキーマが形成されると、ビジネス上、二つの弊害を生じます。その弊害を避けるために、今後お伝えするさまざまなコンピテンシーのテクニックが出てくる。そんな風にコンピテンシーとつながってきます。

 

長くなりましたので、このスキーマの事例と、その弊害については、次回ご紹介していきたいと思います。