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コンピテンシー実用講座

(7)コンピテンシーインタビュー ①はじめに

ここからしばらくは、コンピテンシー分析に必要な情報収集ということで、コンピテンシーインタビューの進め方についてご紹介していきます。

まず、コンピテンシー分析に必要な情報について、簡単に復習してみましょう。

 

コンピテンシーは、プロセスと結果の因果関係を大切にしますから、何をしたといういわゆる『行動情報』だけでは、分析ができません。その行動がどのような結果につながったのかという、『結果情報』が必要になります。
行動と結果をワンセットで処理する。まず、コンピテンシーとは、という基本のところでお伝えしたのが、この点です。

 

次に、コンピテンシーレベル、言い換えると成果の再現性を判断するためには、表面的な『動作情報』だけでは不十分だ、という話がありました。

その行動の背景として、行動のきっかけとなった『状況』の認識のしかた、その状況に対してどのような『意図』を形成したのか、そして、その意図を実現するための方法をどのように導いたのか(自分の思考なのか、経験なのか、知識なのか、それとも他者の指示によるものだったのか)。

このように、状況→意図→思考→行動→結果という、行動発生過程を一通り情報として押さえることで、その人の成果の再現性、コンピてシーレベルを分析することができます。

 

このように整理すると、素直に行動発生過程に基づいてインタビューして、相手がそれに答えてくれれば、コンピテンシー分析ができそうなものなのですが・・・残念ながら、そう簡単にはいきません。なぜか。
理由は大きく分けて二つあります。

 

一つは、多くの場合、相手は行動発生過程というフレームワークや、そもそもコンピテンシーという概念を知らないことが多い、という点です。知識を持たない相手に、
「まず、あなたが認識した状況は?」
などと質問しても、何を答えて良いのかがわからず、インタビューとして成立しないでしょう。

 

では、知識があれば、情報が出せるか。そんなこともありません。

たとえば、このコラムをここまで読みつづけ、十分にコンピテンシーや行動発生過程を理解した方が、

「じゃあ、自己分析をやってみよう。」
と、いうことで、行動発生過程のフレームワークに沿って、事実関係を言語化してみたとします。
すると、おそらく、自分の強みや成果の再現性について、
「私の強みはこれで、このレベルだ!」
と、確信を持って判定できない可能性が高いでしょう。

 

インタビューがうまくできない二つめの理由は、私たちのコミュニケーション、もしくは、日常業務や生活における、言語化のしかたに関わるクセ、無意識の罠にあります。
私たちが無意識に陥るこのクセ、傾向、無意識の罠を理解し、しっかり自覚した上で、対策を打たないと、コンピテンシー分析に必要な情報を獲得することができないのです。
じつは、その罠には、コンピテンシー分析だけでなく、日常会話や業務においても同じように陥ります。私が現場の業務観察や業務分析をしていても、多くの方が陥っているケースをひんぱんに目の当たりにしています。

 

この罠に対する対策が、コンピテンシーインタビューの技術のほとんど全てだと言っても、過言ではありません。
ですから、コンピテンシーインタビューのトレーニングを受けて、コンピテンシーインタビューがしっかりできるようになると、ほぼ自動的に、日常業務やマネジメントにおけるコミュニケーションの質が格段に上がります。
以前、ある企業で採用面接研修というタイトルで、管理職向けにコンピテンシーインタビューの訓練をしていたところ、受講者の方が、
「採用面接の研修と言いながら、じつはこれは俺たちに向けた『部下のマネジメント研修』なんじゃないか?」
と、おっしゃったことがありました。まさに慧眼。その時は、
「人事にはそのつもりはないかもしれませんが、コンピテンシーインタビューがしっかりできると、部下の把握のしかたも、マネジメントのしかたも変わってきますよ。」
と、お答えしました。

 

そんなわけで、コンピテンシーインタビューの技術を紹介するにあたっては、この、私たちが陥る無意識の罠について、しっかり説明する必要があります。
この無意識の罠をしっかり理解すれば、自ずとどうすれば良いかがわかり、それがコンピテンシーインタビューの技法につながっていきます。

 

と、いうことで、次回からこの無意識の罠について、紹介していきます。なお、私たちが理解しなければならない無意識の罠は大きく分けて二つあります。

 

 

『スキーマ』と『ハイコンテクスト思考』。

 

一つずつ丁寧に紹介していきたいと思いますので、気長にお付き合いください。

 

(宣伝ですが、『スキーマ』と『ハイコンテクスト思考』という言葉の意味と対策は、拙著『実践!ロジカルシンキング研修』でも紹介しています。興味のあるかたは、ぜひAmazonで検索してみてください。)