2019.04.09
(6)コンピテンシーレベルに関わるよくある質問 ①コンピテンシーレベルはマックスをとる(つづき)
前回、複数の場面で複数のレベルが確認されたとき、その『人財』のレベルはどのように判定されるのか?というよくある質問について、その回答を述べました。
結論を言えば、マックスをとります。
なぜならば、私たちの日常の過半はレベル2.0や2.5で成果を出すことができるからです。
レベル3.0以上が求められるのは、それでは対応できないような波風、つまり問題や高い成果要求が生じたときなので、その時にしっかり3.0以上が出せているかどうかが、その人の成果の再現性を示します。そう考えるので、コンピテンシーレベルはマックスをとるのです。
いざというときの、その人の対応力。それがその人のレベルを示します。
しかし、この『コンピテンシーレベルはマックスをとる』という原則が通用しないケースも当然あります。それが今回のテーマです。
前回のケースで考えてみましょう。3つの場面があって、それぞれ2.0、3.0、2.0という人がいます。普通に考えれば、マックスをとって、この人は3.0だと判断してもよいでしょう。
ところが、その2.0の実績が、こんな内容だったらいかがでしょうか?
マニュアル通り、手続き通りに行うと1週間かかる作業があったとします。特に波風、異常が発生していない時なら、マニュアル通りに実行して1週間で終えれば、レベル2.0ということで特に問題がありません。
ところが、この作業について、お客さまが、
「なんとか6日間で終えられないか?」
と、いうご要望を提示しました。このような要望はよくあることで、決して不可能なことではありません。
このような要望がよくあるということを知っており、経験していれば、レベル2.5を発揮してなんなくクリアできる内容です。
ところがそこで、
「いえ、これは1週間かかる作業ですので、6日で終えることはできません。」
と、杓子定規に言い張り、お客さまが
「前の担当者はやってくれたよ?」
とまで言っているのに、
「いえ、それはできません。」
などと言って、結果的にクレーム騒ぎに発展してしまった……。
この場合、明らかにこの人は、本来発揮することが求められていたレベル2.5すら発揮できていないということになります。
『コンピテンシーレベルの判定はマックスをとる』という原則は、あくまで、
「必要がないとき、つまりなんの波風も立っていないときに、あえてレベル3を発揮しなくても成果は出る。」
という前提のもとに成り立っています。しかし、
「波風、異常が発生している、つまりレベル2.5や3.0が求められているにもかかわらず、柔軟に対応する必要性に気づけず、レベル2.0で対応してしまった。」
と、いうことであれば、この前提が崩れています。
この事例で言えば、この人は、レベル2.5すら発揮できないことがあるという、そのくらいの成果の再現性の人だ、という判断になります。したがって、レベル2.0という判定が妥当ということになるでしょう。
複数の事例を検証し、レベルのバラツキが、
「必要性が発生していたのに、その場面で求められるコンピテンシーを発揮することができていなかった。」
と、いうことであれば、その時はマックスをとるのではなく、
「成果の再現性が不安定である。」
と、いう判断を下して、その人の成果の再現性に見合ったレベルを人財レベルとします。
なお、このとき、それこそ杓子定規に、
「一回でも、発揮できていない事例があったら、人財レベルの判定を下げなければ!」
などと、考える必要はありません。
あくまで、その人の成果の再現性を考えます。
「大抵の場面で、レベル3.0が発揮できていた。発揮できていなかった少数事例は、ちょっとした油断やケアレスミスによるものだった。本人も自覚していて、それ以降はそういうミスが起きないように注意していて、再発していない。だから、来期は同じような失敗をせず、安定的に成果を出してくれる可能性が高いだろう。」
こんなふうに考えられるなら、その人はレベル3.0でいいのです。
なお、たとえば営業職であれば、顧客の得意不得意といった理由による、『レベルのかたより』というものが生じるケースがあります。
「Aさんは、ある特定の顧客、ある特定の分野についてなら、レベル3.0が発揮できる。ところが、それ以外の、多くのお客さんにはそれができなくて、レベル2.5や2.0で対応してしまう。
発生頻度は3.0がたくさんあって、2.5や2.0は少ないけど、それは得意なお客さんのところばかりに行き、苦手なお客さんを避けているからだ。」
もし、こんな人がいたら、その人の営業としての成果の再現性はいかがでしょうか?
営業として、安心して仕事を任せ、成果を期待できるとは言い難いでしょう。この場合も、成果の再現性が不安定であるという評価をして、その人がどのお客さまにも安定的に発揮できるレベルをもって、人財レベルとしたほうがいいでしょう。
このように、日々のコンピテンシーの発揮レベルを、人財レベルに結びつける時には、複数の実績を具体的に見て、
「その人の成果の再現性は、どの程度か?」
というように、基本に立ち返って判断してみてください。