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コンピテンシー実用講座

(5)コンピテンシー分析の基礎 ③コンピテンシーレベル1

根拠となる情報を獲得したら、次のステップでは、それを人材の強み、弱みという分析につなげていきます。

前述の通り、コンピテンシーの分析にはレベルの分析と種類の分析がありますが、ここではまず、レベルの分析についてご紹介していきます。

コンピテンシーのレベル尺度は大きく分けて5段階、細かく分ければ7段階ありますが、まずは基本の5段階について、述べていきます。

※ 長くなるし、大切な部分でもありますので、レベルを一つずつ、5回に分けてご紹介していきます。

 

冒頭から、コンピテンシーの評価の視点は未来形であり、『成果の再現性』に着目するのだと、何度も繰り返してきました。その『成果の再現性』という抽象的な概念を、5段階に落とし込んだものが、コンピテンシーのレベル尺度です。

このレベル尺度を理解する際にも、『行動発生過程』を当てはめると、理解しやすくなりますので、行動発生過程を紙に書いて、横において眺めながら読んでいただくとよいでしょう。

 

<レベル1>

コンピテンシーレベル1とは、行動発生過程の一番下、『行動』すら、自力で起こすことのできないレベルです。研修では、よく、

「行動と結果のあいだの“→”からしか、自分でできないレベル」

と、いう言い方をしています。

行動発生過程の上流、つまり状況を認識し、意図を形成し、やり方を考え、行動するという、そのすべてを他者に依存しているレベル。

「いま、これやって。」

「次は、これをやって。」

と、いうように、都度都度、作業指示を与えられ、その通りに行動するレベル。行動に移すタイミングすら、自分で判断できないレベル。

なので、よくこのレベルを文言にするときには、

『定型的な作業を、他者の指示に基づいて実施するレベル』

『他者の指示に基づく業務遂行』

といった表現のしかたをします。よく言えば、

「他者の指示があれば行動できる」

と、いう表現になりますし、悪く言えば、

「言われなければ動けないレベル」

とも言えます。

 

ただ、誤解をしてほしくないのは、「レベル1=無能」と、いうことではありません。

レベル1とは、十分な業務知識を有していない状態なのです。ですから、誰もが初めての業務に取り組むときはレベル1からスタートします。

かく言う私もそうです。たとえば、私が新入社員で、はじめてパソコンを使うとき、やはりレベル1でした。指導員の方が、丁寧に指示をしてくれました。

「まず、この電源ボタンを押して。」

「そうしたら、start:dos/って打ち込んで。」

「start:lotus123って打ち込んで。」

私は、言われたとおりに、作業します。これがレベル1。

これは年次の問題ではありません。はじめての仕事、知識のない仕事を始めるときは、だれもがレベル1から始まるのです。

厳密に言うと、レベル1の定義で言う『他者』とは、人だけではありません。アニュアルをいちいち見ながら、その指示に従っている状態もレベル1です。

それから、たとえば新しいゲームを入手して、はじめてプレイするとき、チュートリアルというのが出ます。あれに従ってプレイしているのもレベル1。

私は2015年にはじめて本を出版しました、アマゾンキンドルストアで、電子書籍で出版しましたが、すべて自力で出しています。

その際は、本の書き方から、登録のしかた、米国税務免除の手続きまで、基本はアマゾンのマニュアルページを見ながら、一つ一つ実行し、わからないところはアマゾンのヘルプデスクに電話して、教えてもらいながら。45歳のいい歳をしたビジネス経験者でも、初めての時はレベル1で取り組むしかないのです。

 

この、レベル1の状態で1回か2回、同じ仕事を繰り返すと、普通はレベル2に到達します。レベル2とは業務遂行上、必要な知識がすべて身についた状態です。

このレベル2について、次回詳しく説明していきたいと思います。