2017.06.07
人事制度の改訂は必要か?
最近、人事制度の改訂に関わるご相談が増えてきた。長年、人事のコンサルティングに携わっていると、定期的にこうした波がやってくるのがわかる。その波がまた、やってきているようである。
しかしながら、こうしたご相談が即座に「人事制度改訂プロジェクト」という仕事につながらないのが、今回の波の特徴であるように思う。しかも、それがこちらからの提案によるものだというのも特徴的だ。どういうことかというと、こちらから「制度を見直す必要がないのではないでしょうか?」と提案するケースが多く、しかも説明すると、お客様もそれになるほどと納得するのである。過去の成果主義ブームの時なども、そういう提案をすることがままあったが、たいていの場合「それでもいいからやってくれ」と押し切られたものだった。
現在のご相談の特徴として挙げられるのは、抱えている人事上の問題、課題が「制度」の改訂によって解決されるものではなく、「運用」の改訂によってしか解決できないものであることが多いという点だ。それもこれも、いまの人事上の課題の多くが「働き方改革」と連動しているからだろう。制度をどのように変えたところで、働き方、つまり運用が変わらなければ、目的が達成できない。だから、人事側であれこれやっても、現場が変わらなければ意味がない。
もう一つは、「制度」の枠組み自体に、あまり修正の余地がないというケースも多い。特に大きな企業の場合は、以前の制度改定の時に、きちんとコンサルタントを入れて構築している。多少の出来、不出来はあっても、骨格としてはそれなりに論理的に整合しているものだ(そうでない場合がまれにあるので、その場合は、いただけないコンサルタントを使ってしまったと後悔するしかない)。この15年くらいに作られた制度は正直な話、どこも似たり寄ったりだ。が、それは悪い意味ではなく、過去の様々な試行錯誤の末に、たどり着いた結論がシンプルで、論理的にこうならざるを得ないというものだからだ。
ただ、この論理的に整合させた制度が、その論理通りに運用できていないことが多い。改定前の年功序列や情意考課の影響を色濃く残し、「仏を作って魂入れず」という状態になっている。そして、それが運用の問題だと気付かず「そういう制度だ」と勘違いしたまま、定着してしまっているケースが非常に多いのだ。
そうなってしまう原因は、実は過去の制度改定時に「人事制度だけ変えて、働き方はそのまま」といういびつな状態になってしまっていたからなのである。
なので、「働き方改革」という世の中の変化に合わせて人事制度を改訂したいと言っている場合、実は「そもそもの制度の考え方にのっとって、きちんと運用すれば、働き方改革を実現できるツールになりますよ」となる。
こうした話を、その会社の人事制度の中身を拝見しながら説明すると、冒頭に書いた通り「なるほど」となる。で、制度改定の話は消えていくが、運用、つまり働き方改革をきちんと進めていくための業務コンサルティングのお話に変化していくのである。いずれにしても、弊社にとってはありがたい話なので、今後も悩んでいたらぜひご相談いただければ幸いである(笑)。