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今日の一言

怒らない方法:

前回、理性的という言葉の定義について述べたところ、「私は短気で、つい怒ってしまう」という方が、実に多くいらっしゃった。気持ちはわかる。私も相当短気で、それが原因で悩んだ時期もある。なので、こうすれば怒らずに済むという確固たる方法があったら、私が知りたいくらいだ、というのが正直なところだ。だが、短気は短気なりに、このままではいけないと悩み、考えたことはあるので、それを述べてみたい。研修で話せるほどの内容ではないので、あくまで私見である。
アンガーマネジメントの鉄則とも言われるが、「最初の6秒」というのはやはり真実であるように思う。ただ、短気な私としては、その場で6秒を待つというそれができなかった。それができるくらいなら、そもそも怒らずに済むよな、とすら思った。なので、私はその場で6秒を凌ぐのではなく、潔くその場から逃げ出すことにした。どんなに不自然でも、その場で怒り出すよりは数倍マシだと、自分に言い聞かせて。たとえば、子供を叱っている時、頭では否定的ストロークの3条件を言い聞かせているが、やはり時にはそれが難しくなる。すると、叱っている途中でも、「ちょっとトイレ」などと言って、とりあえずその場を離れるのだ。仕事でも、メールや電話、会議などで相手が非常に理不尽なことを言っていて、何度も平行線を辿るとき。滅多にないが、いい加減にしろと言いたくなることもある。そういう時も、会議中であろうが、電話であろうが、怒った顔になる前、自然な表情を維持できているうちに何も取り繕わずに「ちょっと失礼。すぐ戻ります」と言いながら、席を立つ。相手が上司や顧客であっても、だ。本当に失礼な行動だが、そこで感情的になって険悪なムードになるくらいなら、不自然さや違和感など、物の数ではないと割り切った。
そうやって、その場を離れてしばらくすると、冷静に損得や利害を考えられるようになる。「相手の理不尽な言い分をこちらが受け入れて、失うものは何か」とか、「ここで全て断って、この商談を失ってもいいんじゃないか」とか。怒って商談をぶち壊すのではなく、同じ壊すでも冷静に、合理的に壊した方が、いい結果になることが多い。相手が上司なら、「ガタガタ言わずに相手の言うとおり引き受けて、やってみてダメだったら御免なさいでいいや」「この上司に評価されたいとか思うからいけないんだよな。引き受けて失敗して、評価が落ちたって、ここで怒って敵対関係になるよりましだよな」といったことを冷静に考える。こうやって、頭を戦略モードに切り替えてから席に戻る。失礼しました、と。面白いことに、こちらがそうやってクールダウンしている時間というのは、相手にとってもクールダウンになることが多いようで、戻れば相手もすこし冷静に、言い分を下方修正してくれることも多い。そうでなくても、こちらから「冷静に考えてみたのですが、どうやら今回はお役に立てそうにないので、他の企業さんにお任せします」のように、理性的に終止符を打てば、後味の悪い結果にならずに済む。(商談の場合、意外とそうやって綺麗に終えておくと、後から話が復活することだってある。)
たいていの場合、そうやってクールダウンするときに自分に言い聞かせているのは、相手や自分の将来に対する期待値を引き下げるという作業であることに気づく。これは人によって異なるだろう。おそらく私は防衛本能が過剰なのだ。難しいとか、大変だとか思うと、それを回避したくて怒る。自分の評価や立場、今後の環境を守るために怒る。こうやって書いてみると「ちっちゃいな」と思うが、こればかりはそれが自分なのだから仕方がない。どんな自分であれ、そうやって、自分の怒りを振り返ると、自分がなぜ怒るのかというのも、だんだん言語化できるようになっていく。これが言語化できた頃から、私は容易には怒らなくなった。
まずはその場から逃げ出すこと。それから自分の怒りの原因を言語化して、その原因に沿った「自分の説得方法」を作り出すこと。私なりの「怒らない方法」と言えば、こういうことになる。