2017.03.13
性格は変わりにくい?
採用面接に関わるコンサルティングや研修をやっていてよくわかるのは、私たちは人を見ようとすると、(1)弱みや短所に注目しがち、(2)能力的な要素よりも性格的な要素に注目しがち、という二つの傾向が強いということである。わかりやすく言えば、能力的にすごく優秀で人格的に問題がありそうな人と、能力的には普通で人格的によさそうな人が現れると、多くの方が是h社を不採用とし、後者を採用しようとする。そういう傾向を自覚していないから、採用がすべて終わって、その結果として数十人の新入社員を並べると、「今年の新入社員はおとなしい」とか「今年の新入社員はとがっていない」とか、不満を述べるのである。だけど、単純に言えば能力よりも「いい人」を優先して採っているのだから、そういう結果になるのは当たり前なのだ。
こうした採用にならないように、コンサルティングや研修では「弱みよりもまず強みに着目する」「人格的な要素よりも能力的な要素に着目する」ということを訴えるわけだが、そうすると今度は、「そんな人材を採って、組織の中でやっていけるのか」という質問や懸念が寄せられる。
こうしたやり取りがあると、必ず二つのことをお伝えしている。一つは、「そもそも短時間の面接で性格的な要素を見極めることは不可能である」ということだ。その人が健全か不健全か、暗い人か明るい人か、いい人か悪い人か……そんなことは、面接ではわからない。ある程度の期間にわたって、様々な場面で一緒にすごしてみないとわからないし、相手が変われば対応も変わるので、ある人があいつは暗いと認識しても、別の人は、いやけっこう明るいよ、と言ったりする。一人の面接官の目で、十分や一時間の面接でわかるわけがないのである。同時に、仕事で成果を出すのはあくまで能力的な要素によるものなので、少なくとも企業として採用するならば、能力面を重視したほうがいい。性格は見ないというよりは、見ることができない。見ることができないのに、つい気になってしまうから、あえて見ないように、見ないようにと言い聞かせたほうがいいのだ。
もう一つは、そうやって性格的な短所を気にする方々がよく言う言葉に、「能力は会社に入ってから伸ばせるが、性格は変えられない」という一種の迷信がある。現場で業務改善や人材開発に携わっているとよくわかるのは、「能力の低い人を伸ばす」のはとても難しいということだ。もともと能力的に優秀な人なら、育て方や活用のしかたでぐんぐん伸びていく。ここで言う能力というのは、学習能力や、自ら考え、行動するといった主体性、それに、分析したり考え出したりといった思考力をイメージしている。それらの能力を伸ばそうとすると、動機づけや信頼関係の在り方など、能力以前のところから変えていく必要がある。とても大変だ。それに比べると、性格的な要素というのは、意外とちょっとしたきっかけや、周りの人々との関係性によって大きく変わっていく。変わるというのとは違うのかもしれない。もって生まれたものが変わるのではなく、環境によって発現のしかたが変わるのだろう。中途採用などではよくあることだが、前の会社で人間関係がうまくいかなかったからと言って、新しい会社でうまくいかないとは限らない。いままで暗いとか、消極的だと言われていた人が、会社や環境が変わると、ガラッと変わる。そんな事例にはことかかない。そういう意味では、「能力を引き上げるのは非常に大変だが、性格の方は、こちらのアプローチ次第で変えやすい」というのが、現場での実感なのである。
性格は変えられる。相手の性格は、あなた自身のアプローチで変わる。面接の場で相手の性格が悪く見えたとしたら、それは面接官側に何らかの問題があるのである。受け入れ側はそれを肝に銘じておく必要がある。