2017.03.01
成長が遅いのは、誰のせいか?
若手がなかなか仕事を任せてもらえない会社には特徴がある。それは、仕事で成果を出すときに必要となる3つの能力、『知識』『経験』『思考』のうち、『経験』に依存する割合が高い会社である。経験を繰り返さなければ、成果を生み出すために必要な技能やスキル、判断力が身につかない。だとしたら、当たり前だが「経験の長さ」が求められる。だから下積みが長くなる。これは仕方がない。
ところで、日本の企業は「全員一律」という扱いが好きだ。たぶん管理しやすいからだろう。だから、新入社員が入ってくると、1年間は教育期間で、2,3年の若手修業期間を経て、4,5年目から本格的に戦力化というストーリーを、全員に当てはめるような人事制度になっていることが多い。
しかし、たとえば『知識』や『思考』主体の仕事であれば、新入社員もベテランも関係ない。たとえば経理や人事。経理であれば簿記1級や税理士資格、会計士資格をもった新入社員が入ってきたら、経験が長い人間と対等に仕事ができるはずだ(そうでないとしたら、会社の業務プロセスの方に問題があるにちがいない)。人事にしても、大学や大学院で人事を専門に学んだり、社労士資格を持っていたら、普通に制度設計や給与計算、労務管理などをこなせるはずである。マーケティングや広報をを専門的に学んだ新卒は、企業でただ経験を積んだ人間よりも、よほど即戦力たりうる。
採用も『一律』でやるから、そういう人の採り方をしない。採ってから配属を決めるのだから、当然だ。使い方や目的を想定せずに、「何でもできそうな、よさそうな人」を探す。非常に効率が悪い。貿易を行う仕事で使うつもりなら、貿易を学んだ人を採用したほうがいいのに、何を学んだかではなく、どこで学んだかで採用する。同時に、せっかくそういう仕事がしたくて、そういう専門的な知識や資格を身につけた人であっても、一律で新入社員扱いをして、能力に合った仕事をさせない。
中途採用にしても、新卒採用にしても、もう少し採用の要件を具体的に設定して、その要件に見合った人材を獲得していくべきではないか。そして、その延長線上で成長させ、キャリアを広げていくべきだ。少子化の流れの中で、学生がキャリアを決めきれずに大手志向となっていくのも、「何を勉強したか」ではなく「どこを卒業したか」ばかりを問われるからだ。
企業は人材の未成熟を学校教育の責任に転嫁するばかりでなく、採用を含めた人事のあり方をゼロベースで再考すべき時に来ているのではないか。