2017.01.18
制度と人力:
業務にしろ、人事にしろ、制度を作るということは、個人の力では統制しきれなくなった限界を補完するためであるケースが多い。だから、例えば弊社のように、一人で経営しているような会社では人事制度や業務管理の仕組みなど、必要がない。大きな企業になると、たくさんの人がいる。たくさんの人がいるから、管理職もたくさんいる。これらの管理職が十分なマネジメント力を持っていれば、それほどたくさんの制度を作る必要もない。特に、人事制度はマネジメントの支援ツールだから、管理職がしっかりしていれば、大した仕組みはいらないのである。
ところが、最近はどこの企業でも現場の管理職が制度に精緻さを求める傾向が強くなっているような気がする。「評価基準をもっとわかりやすくしてくれないと、正しい評価ができない」とか、「目標設定が正しくできるように、指標を決めてくれ」など。現実には、こうした要望にこたえても、正しい評価も正しい目標設定も実現しないことが多い。もっと、もっとと、キリがないくらい要求が出てくるだけだ。むしろ、細かく作り込むことで、きちんとしたマネジメントをできていた人たちから「現実のビジネスに合わない」といった不満が出てきたりする。
日本の多くの企業は、その経営のコンセプトとして「人力重視」であることが多い。人材を人財と表現し、人材の力量を最大限高めて行くことで、企業の競争力を作り出していこうとする。だから人事制度の考え方も、欧米のように「ポストにお金を払う」のではなく、「人材の成長度合いに合わせてお金を払う」という考え方が主流だ。キャリアについても、一つの会社の中で成長させて行くというように、会社がコントロールしようとするのが主流。「自社にポストがなければ、他の会社にポストを見つけてキャリアアップして行く」という本人の意識と責任に帰属させていく考え方は、なんとなくよろしくないというイメージを持たれる。「人力重視」なのに制度を作りこむ。そうすると、本来責任を持つべき管理職が、人材の評価や育成ができないことを制度のせいだ、と他責の考え方に陥っていく。結果的に人の力が弱まって行く。そんな自己矛盾に陥っているケースが散見される。
何か不具合が起きたときに、なんでもかんでも制度で対応しようと考えすぎないほうがいい。制度でカバーするべきか、人力、つまり運用する力を鍛えるべきかという、両方を視野に入れてバランスを取っていかないと、あるべき解決策にならないことが多い。
どんなに素晴らしい制度を作り上げても、運用する人のレベルが伴わなければ、目的は達成できないのだ。