2016.12.16
○○にもいろいろあるけれど:
私たちは抽象的に表現し、やりとりをする。日本人の言語特性上、そういう傾向が強い。表現だけならいいが、基本的に私たちは言葉で考える生物なので、言葉に出したところまでしか考えない。そういう意味では、私たちは抽象的なところで思考停止に陥りやすい。いわゆる「雰囲気で仕事をする」というやつだ。
わかりやすい例で言えば「再発防止を徹底します」という仕事のしかた。二字熟語には中身がないと思った方がいい。防止とは具体的に何をするのか。徹底というのはどこまで何をどう徹底するのか。そういう中身を考える必要性にすら気付かず、考え切った気になる。で、誰かから突っ込まれて気が付き、絶句するのである。「で、それって具体的には何をするの?」jと。
このくらいわかりやすければまだよい。たとえばこんな例もある。「評価制度を通じて部下の育成に取り組むことが必要だ」という、一見それっぽい文章。雰囲気的にはわかる。だけど、具体性がかけらもない。評価制度を「通じて」とはどういうことなのか。部下の育成に取り組むとは具体的にどのようなアクションで、どのような育成に取り組むのか。世の中は、このような「雰囲気だけの文章」で満ち溢れている。雰囲気だけで仕事をすると、具体性がない分を気合と根性でカバーしようとする傾向が強くなるようだ。個人的には、日本企業の生産性が低い原因の一つだと思う。
自らの思考停止に気付くためにはセンサーが必要だ。それがタイトルに挙げた「○○にもいろいろあるけれど」である。日々、これを当てはめながら考えたり、やり取りをしたりする癖をつけると、情報に対する接し方が変わってくる。これが当てはまるということは、まだ中身を詰め切れていないということだ。評価制度にもいろいろあるけれど。「通じて」にもいろいろあるけれど。部下にもいろいろいるけれど。育成にもいろいろあるけれど。単語単位、文節単位であてはめていく。当てはまったら、その中身を考える。いろいろあるけれど、具体的に言うとどういうことだ?と。
昨今、残業削減に対する意識が高まっている。残業対策にもいろいろあるけれど、まずはこの「雰囲気で仕事をする」クセを改善するところから手を付けてみてはどうか。