2016.12.06
できることをやってはいけない;
できることをやるんじゃない! やるべきことをやれ!
というセリフは、ビジネスドラマやドキュメンタリーでありがちだ。気合と根性を示す言葉だ。しかし、そういう捉え方をすると、現実の世界では仕事の仕方を間違える。
ドラマの中におけるこのセリフは、「やるべきこと」が「できること」を超えているという前提で使われている。だが、現実の職場では、「やるべきこと」が「できること」を上回るケースはほとんどない。なぜならば、「できないと分かっている人に仕事を与えない」からだ。「あいつなら、このくらいの仕事はできるだろう」という安心感がなければ、仕事は任せない。
私たちは、仕事をするときに「できる限りをやろうとする」傾向が強い。与えられた時間、与えられた資材、そして自らの能力をすべて使って、できる限りのことをやろうとする。ところが、そうやって全力を尽くしたアウトプットが、どれだけ成果や目的に寄与したのかという検証はしない。なので、自己満足に陥りがちだ。
ある企業で、購買の担当者に張り付いていたことがある。業者が数十ページにわたる企画書・見積書を提出してくるが、彼は中身などみなかった。最終金額を書いてあるページを見つけ出し、そのページだけを抜き出して、あとは無造作にゴミ箱代わりの段ボール箱に放り捨てていた。「金額だけでいいって言っているのに、みんな変えないんですよ。この企画書を作る時給分だけでも金額を減らしてくれたほうがありがたいのに。」と、苦笑していたのを今でも覚えている。
仕事において、「やるべきこと」とは「目的の達成に効果のあること」「成果として設定した指標の向上に効果のあること」である。私たちは、一つ一つの仕事について、目的や成果をきちんと確認して、それとプロセスを関連付けて考えるということをあまりしない。だから、その場その場での思い付きで、良かれと思って様々な工夫をする。だから、「できる限りのことをやる」と、たいていの場合、無駄が多くなる。
仕事は、「やるべきこと」をデザインするのが最も重要で難しい。目的や成果を明確にして、その達成に必要なこと、その成果を高めるために効果のあることだけで組み立てる。それができる人は、当たり前だが最短距離で成果を出す。その場その場で「できる限りを尽くす」というような気合と根性による仕事のしかたでは、労多くして実りが少ない。
できることをやるんじゃない! やるべきことをやれ! とは、そういうことなのだ。、