2016.11.30
経営の視点:
経営の視点と言っても、大それたことを言おうと思っているわけではない。たった一人でやっている会社だって、経営が必要だ。では、経営の視点とは何か。金勘定である。
最近、管理職の意識や視点を高めたいというご相談が多い。では、現在どのくらいのレベルなのかを聞いてみると、目の前の仕事を一生懸命やるレベル。与えられた目標に向かって頑張るレベル。なるほど、と思った。管理職ならば、その与えられた目標や仕事を自分なりに評価するところから始めないといけない。そういう視点がないというのだ。確かに、意識や視点を高める必要がある。その仕事や目標を完遂・達成すると、どのくらいの効果・影響をもたらすのか。それから、その目標達成に向けてどのくらいの負荷・費用が掛かるのか。管理職ならば、Cash inとCash outを評価して、黒字になるという確信を持たなければならない。
こういう話をすると、「そんな風にあらゆる仕事を定量化できるわけがない」という反応が起きる。それが、冒頭のような相談を受ける管理職のレベルなのだ。会社としては、それでは困る。例えば、ある管理職が、ある部門の決算書を作ることを命じられたとしよう。まず、第一歩として費用を見積もる。できないはずがない。それをやらせる部下の時給はいくらか。自分の時給はいくらか。その決算書を作成するのに必要な時間数は、誰にやらせるとどのくらいか。自分がやるとどのくらいか。時給×時間で、コストはざっくりいくらくらいかかるか。次に、効果・影響。その決算書をどのように使うつもりなのか。何の検討に使うつもりなのか。その検討の結果というのはどのようなものを目指していて、その検討がうまくいくと、どのくらい儲かるのか(+だけではない。いくら損失を低減できるのか、という場合もある)。こういう確認をしてみたときに、「ちょっと見てみたい」という程度の、つまらない興味関心で仕事を頼む輩は意外と多いものだ。その場合、効果影響をあえて定量化するならば、答えはゼロだ。価値がゼロの仕事に全力で取り組んだり、部下に全力を尽くさせる管理職は失格だと言わざるを得ないだろう。だけど、そういう見積もりさえしていないのに、なまじやる気や仕事力だけが高い人が管理職になると、あらゆる仕事に全力を尽くそうとする。組織としては大赤字だ。それに気づかない。結果的に、部下が疲弊するだけの組織になる。
管理職は、すべての仕事を定量化できないと言ってはいけない。民間企業においては、あらゆる仕事は金儲けのためである。少なくとも、すべての仕事にかかるコストくらいは、きちんと見積もる習慣をつけるべきだろう。部下に仕事を与えるならば、その仕事に対する「値付け」をきちんとしてあげるのは、発注者としての上司の責任でもある。自分の組織の毎週、毎月の収支状況をきちんとモニタリングできている人のことを、「経営視点のある人」という。さらに言えば、3年後、5年後も破たんせずに、きちんと組織を継続させていられるだろうか、と不安を持ち、中長期的な資金繰りを見据えて組織を運営できていたら、それはかなり大したものだ。経営視点というのは、突き詰めればただそれだけのことなのだ。