2016.10.25
再現性という視点;
仕事のしかたについては、多くのことを現場のハイパフォーマーの皆さんから教わることが多い。特に、細かいテクニックよりも仕事をするときの、ものの見方や着眼点の違いには、考えさせられることが多い。
その中で、最近特に大切だと感じたのは、再現性という視点である。この言葉自体は私たちも研修やコンサルティングでよく使う。だが、それをどう実践しているかという事例レベルで拝見すると、改めてその重要性に気づくのだ。
ハイパフォーマーは、必ずと言っていいほど、再現性を考える。何か失敗したり、うまくいかなかったりすると、「放っておけば、また同じ失敗を繰り返す」と考える。だから、それを防ぐために対策を打つ。普通の人たちはそこで、「今回は運が悪かった」と考える。または、自分が悪かったと思っても「めったにあることではない」と考えて、その場が収まれば、それでおしまい。昔から言われるところの「喉元過ぎれば熱さを忘れる」というやつだ。
うまくいったときも一緒だ。普通の人は「よかった」と喜びをかみしめ、それでおしまい。だけど、ハイパフォーマーはここでも再現性という視点で、その成功体験をふりかえる。「うまくいったというのは、具体的に何がうまくいったのか。」「なんで、うまくいったのか。」「どうしたら、今後も同じようにうまくいくのか。」・・・と、次やその次も、繰り返し成功が再現するように、自らの体験を体系化・知識化していくのである。
それが、時折行われるのではなく、思考が習慣化しているというのも特徴だ。意識して、やるぞ!と気合を入れて、再現性を考えているわけではないのだ。つい、考えちゃう。たとえば、とあるハイパフォーマーのネクタイの結び方について。かれは、ある朝、ネクタイを結んでいて「おっ、なんかすごくきれいに結べた!」と思ったのだそうだ。で、どうしたかというと、鏡に向かって、なんでこんなにいい感じに見えるのかをしげしげと観察した。結び目の大きさ。長さ。特に長さがポイントだと気が付いた。そうすると、次回もこうしたいと思う。これが再現性の視点。で、考えた。ベルトのバックルに重なるくらいかな? いや、でもベルトの位置ってパンツによって異なるよな。これも再現性の視点。毎回ぶれるような基準では役に立たない。で、彼は考えた。へそだ、と。自分のへその位置は変わらない。へそにうまくネクタイ先端の三角形の上端が重なると、ちょうどいい長さに見えるんだ、と。では、どうしたらその長さになるのか。せっかくきれいに結べたネクタイをほどき、なんども試す。で、ようやく気が付いた。首にかけた後、ネクタイの太いほうを、左の手の中指の付け根にくるところに合わせる。そこから結ぶと、ちょうどへそのところにくる。
その日から、彼のネクタイは、必ずへそのところにネクタイの先がくるように結ばれることとなった。毎朝、きれいに結べて気持ちがいい。再現性というのはこういうことだ。
同じ成果を繰り返し、安定して出せる。決して、ラッキーで実現することではないのだ。