2016.10.12
保身でキャリアを守ることはできない;
無駄な仕事にもいろいろあるが、特に多いのは、「目的を失った仕事」または「ゆがんだ目的の仕事」である。私たちはどうも、ゴールよりもプロセスにこだわる傾向が強いので、目的を具体的に言語化する習慣を身につけるだけでも、飛躍的に効率が高まる。
その中でも、特に最近あちこちで見かけるのが、表題の「保身」を目的にした仕事だ。「万が一」というキーワードで仕事をする人は、得てして無駄が多い。提案書や企画書を作るにしても、「万が一こんな質問が来たら」ということを気にしすぎるので、おのずと作成量が増えていく。「万が一、必要になったら困るから」と、資料やデータを捨てられない。資料やデータだけでなく、手続きや動作も捨てられない。目的を失った会議でも「やめると何か問題が起きるかもしれない」と考えるとやめられない。
一人で仕事をしているならば、それでもいいかもしれない。だけど、会社はチームで回っている。一人がこういう仕事の仕方をすると、それに関係する多くの人が巻き込まれていく。それこそ「万が一」こういう人が上司になったら大変だ。部下は上司の保身のために、「万が一」の確率でしか発生しない事象のために、余計な仕事をこなさなければならない。
気を付けなければいけないのは、リスクを考えるなという話ではないということだ。漠然とした不安で仕事をしてはいけないということである。
「万が一こういうことが起きたらどうするんだ!」と思ったのなら、そういうことが起きた時に、具体的にどのくらいのダメージが発生するのかをきちんとシミュレーションしたほうがいい。そこで発生する労力・コストと、それに備える労力とコストをきちんと比較しなければならない。もしそれらが同等ならば、「万が一」が発生してから対応すればいい。
失敗しないための仕事は、プラスを生まない。失敗しないために労力をかけすぎているならば、その力をプラスを生むことに注いだほうがいい。保身に終始していては、厳しい競争の中では生き残っていくことができないのだ。