トップへ戻る

今日の一言

モチベーションをあげる:

部下のモチベーションをあげるにはどうしたらいいか? という質問は今も昔も多くいただく。が、こうすればモチベーションがあがるという、普遍的な方法論があれば苦労はない。モチベーションというのは、個人個人の内面の問題だから、とても個別的だ。究極のテーラーメイドとならざるを得ない。
が、現場で業務やマネジメントの分析をしていると、多くの方が混乱している点によく気づくので、それを今日の一言に。
多くの方が、モチベーションを「あげるために」という発想でアプローチをしようとしている。それ自体は問題ない。問題は、部下のモチベーションの現在地を誤認していることだ。現在の部下のモチベーションの状態をゼロと捉えて、それを「あげるために」施策を考える。必然的に何かを追加する施策となる。だが現実には、多くの職場において社員のモチベーションの現在地はマイナス状態なのだ。
衛生要因という言葉がある。精神衛生の衛生だ。モチベーションをあげる効果を持つ要因ではなく、下がるのを防ぐ要因。衛生要因は充たされたからといって、新たなモチベーションは生じない。だけど、それが充たされないと不満や不快を含めたモチベーションの低下を引き起こす。衛生要因を充たさぬまま、動機付けにつながる促進要因を追加しても、ほとんどの場合効果はない。車で言えば、サイドブレーキを引いたままアクセルを踏んでいるようなものだ。
社員のモチベーションの状態がマイナスならば、促進要因となるような追加施策を打つ前にまずは衛生要因を満たすことが先決だ。たいてい、地味で基本的な、当たり前と言われれば当たり前のことをきちんとやるというアプローチになる。そういう当たり前のことができていないから、モチベーションが下がっている。
朝の挨拶をきちんとしましょう。上司は部下に対して感情的に怒るのをやめましょう。無駄な会議やルールを無くしましょう。能力のない人をポストにつけるのをやめましょう。能力のない部下に低い評価をつけるなら、低い評価をつけたなりの育成をしっかり行いましょう・・・当たり前のことというのは、本質的なことでもあるので、意外とこれを行うのは大変だ。大変だから、簡単にできて派手な宣伝効果のある施策に流れようとするのも、衛生要因から目をそらす原因なのかもしれない。
会社の制度だけでなく、職場における個人ごとのマネジメントについても、本質的なところは変わらない。部下の動機付けを高めるためにはどうしたらいいか? と悩む前に、まずは部下の不満に丁寧に耳を傾けて、その原因をしっかり探ってみれば、今のマイナス状態を把握できる。そのマイナス状態をゼロに「あげる」ために何をすれば良いかは自ずとわかる。おそらくは、とても地味で当たり前で、それ故に大変だな、と感じることだ。そこから目をそらして、「モチベーションをあげるためにはどうしたらいいか?」と、魔法の杖を探している限り、部下の動機付けは高まらない。