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今日の一言

キャリアのあたりとはずれ: 

 どうしたらキャリアアップを図ることができるか? というご質問は多いが、これに満足な答えを差し上げることはできない。応えることができても、その答えは質問した人が求めるものとは違うからだ。
 この質問をする人は、どうしたら「より確実に」キャリアアップを図ることができるかを問いかけていることが多い。より簡単に、よりスマートに。だが、私が見てきた多くのアセスメント結果からは「確実」を求めた先には、ほとんどキャリアアップの機会がないことがわかる。どんなに知識を身につけても、資格を取得しても、高い学歴を確保しても、それらは必ずしもキャリアアップを保証しない。
 キャリアアップの原動力を分解すると、「成長」と「評価」の二つに分けられる。前者は自己による実質、後者は他者による認識。どちらが欠けてもキャリアアップは図れない。この両面において「明確な差別化」に成功するとキャリアアップにつながる。
 他者と明確に差別化される「成長」を実現するためには、そもそも他者がしり込みするようなハードル(課題や問題)に取り組まなければならない。この段階で「確実」という希望は絶たれる。むしろ失敗する可能性が高いし、それによって評価が落ちたりするから、キャリアダウンのリスクにもさらされる。失敗せずに乗り越えられればキャリアアップ。乗り越えられなければダウン。それだけだ。しかも、失敗したときにそこから逃げると、さらにキャリアダウンするケースが多い。何度も転職して落ちていく人はこういう人だ。だから、チャレンジしたからには、何とか成功という形に持って行けるところまで、逃げずに這い上がろうとするしかないのである。その這い上がるプロセスが成長や実力アップにつながるのである。
 他者と差別化される「評価」を実現するためには、かなり明確な差をつけて、ぶっちぎりでゴールしなければならない。スポーツのように明確に順位が出る仕事は少ないので、些細な差で勝ったとしても「差別化」には至らない。ふつうは、全く同じやり方やプロセスでは、そうした成果は出ない。スキルやスピードを磨いただけでは、そこまではっきりした差にはならないものだ。当然のことながら、全く新しいやり方、ほかの人が思いもつかないようなアプローチを生み出さなければならない。ここにもまた「確実」はない。全く新しいやり方である以上、それがうまくいくとは限らないのだ。(最初からうまくいくケースの方がむしろ少ない。)
 そういう意味で、キャリアにはあたりもはずれもない。あたりかはずれかは結果論に過ぎないのだ。だから、「どうしたらキャリアアップを図ることができるか?」という質問に対しては、「あらゆる困難を機会と考え、逃げずに全力で乗り越えること。」「取り組んだ以上、乗り越えられるまで粘り続けること。」としか言いようがないのだ。楽して、おいしくキャリアアップという道は、全くないわけではないのかもしれないが、少なくとも私は知らない。かなりレアであると言わざるを得ないのではないか。