トップへ戻る

今日の一言

仕組みと運用;

たいていの業務は仕組みと運用から成立している。私たちは、仕事で何か問題が起きると、仕組み側で対応するか、運用側で対応するかを選ばなければならない。個々の判断に、どうも私たちは固有の癖を持つようだ。
本来の選択基準だが、問題の及ぼす影響範囲で選択すべきだ。多くの社員や業務に影響を及ぼす問題であれば、仕組みで解決したほうがいい。新たに仕組みを作るケースもあれば、現行の仕組みを見直すというアプローチもあるだろう。場合によっては、仕組みをなくすというアプローチもありうる。逆に、部分的な影響にとどまる問題であれば、運用側で見直したほうが効果的であるケースが多い。その問題が永続的なものなのか、一次的な問題なのかの見極めをする必要があるし、永続的な場合にも、どのような対応がベストなのか、PDCAを回してからでも、仕組みに落とし込むのは遅くない。仕組みに落とし込もうとするとどうしてもコストがかかることが多いし、一度仕組み化してしまうと、柔軟に改変しにくくなる。だから、運用で対応するほうが、何かと融通がききやすいのである。
この選択は論理的に、一定の基準を持って行ったほうがいいのだが、そこに固有の偏りが見受けられるのである。どのような偏りか。単純に言うと、本社組織で全社の管理業務を担うような人は、どうも何でもかんでも仕組みで解決しようとする傾向が強いように見受けられる。同時に、経営者の中にもその傾向が強い人が多いようだ。これはおそらく、多くの人を一律で管理しようとすることと、その運用を現場に任せることに感じる不安が相まってそうなっているようだ。あとは、単純に都度対応するのが面倒なのだろう。たとえばある企業の人事で「異動を家庭の事情で断られた」というケースが発生したことがあった。この会社では即座に、「異動しないでいい地域限定社員の制度を設けよう!」となった。仕組み化することで、都度の話し合いや折衝をせずにすむように。ところが、実際には家庭の事情で異動できない人はほんの一部だし、それも一時的なものだったりということがわかり、それならば、個々の話し合いと調整で対応したほうがよかったという結果に終わった。(ちなみに、地域限定社員を設けたが、工場の移転・集約で異動させる必要が出てきたり、異動させられる総合職と名付けた社員の中から、家庭の事情で異動できなくなったりする人が出てきて・・・となって、仕組み化が問題解決につながらなかった。)
逆もある。ある時、管理職の昇格審査において、合格者数が少なかった。ところが、ポストはたくさん空いてしまっている。仕方がないということで、「今季は基準に満たない人間も多くいるが、特別にパスさせよう」というように、運用で対応しようとした。この場合、人材不足、ポスト不足が広範囲にわたり、かつ単年度の問題ではなかったので、ポストの任命基準を見直したほうがよいというアドバイスをした。仕組み化で対応したほうが良いケースだったし、実際その通りだった。
なお、現場で目の前の売り上げや処理を追いかけていくような仕事の人は、仕組み発想が足りないケースが多く見かけられる。仕組みに踏み込む権限がなく、いろいろと働きかけて動いてもらわないといけないので、だったら目先の運用でごまかしてしまおう、ということになりやすい。意外と、現場の人が仕組みアプローチを多用すると、劇的に効率が上がるケースも多いものだ。
仕組みか、運用か。両輪を回せる人材になることが、最適な仕事の組み立てには欠かせない。