2016.08.01
議論の意味は?;
最近はコンサルティングのご相談が増えてきていて、様々な議論の場に立ち会うことが多い。そこで気になるのが、掲題の通り「そもそもこの議論の意味は?」という点である。議論が成立するためには少なくとも、①目的がある、②複数の案がある、③複数の案が対立している、といった条件があるのではないかと思う。ところが、多くの議論の場で、そもそもこの前提条件が成立していないことが多い。上記の番号は議論の手順でもある。その手順が踏まれていない。順を追って紹介してみよう。
議論の意味は?と、首をかしげたくなる一つ目のケースは、①の目的がはっきりしないまま、なぜか話し合いだけが延々と繰り返されているケース。傍から見ていてよくわからないので、「すみません。どちらの案をとるにしても、そもそもそのゴールって何ですか?」と、素朴な質問を投げかけると「何をいまさら」と呆れた顔をされる。そこでめげずに、すみませんねー、外部の人間なものでと、すっとぼけて質問すると、誰かが代表して説明してくれるのだが、その説明に対して「いや、そうじゃないだろう」と、反論する人が出てくる。つまり、議論の前提となる目的の段階で共有できていないのだ。こうなると、議論はまずは目的の合意からですね、ということになる。
二つ目のケースは、②複数の案が出ていないのに、議論が続くケース。これは単純に今出ている案に対して、反対の意志だけを表明して、対案を出さない人がいることに起因している。この場合、議論を続けても意味がない。なので、「今出ている唯一の案に反対が出ていても、その解決案が出てこない限り、議論にならないので宿題にしてはいかがですか?」と切り上げていただくのが得策だ。
最後のケースは、複数の案が出ていて対立しているのだが、「なぜ対立しているのかわからない」というケース。これは日常のの場面でもよくあるのだが、多くの人が「自分の意見を通すためには、相手を否定しなければいけない」と思い込んでいる。しかも、相手に「自分が間違っていた」と認めさせないと気が済まない。この習性が無駄な対立を生む。日常でもそうだ。例えば、部下の遅刻を正そうとすると、まずは部下自身に「私が遅刻して悪うございました」と反省させなければならないと思い込む。しかし、多くの議論に立ち会っていると、そんな必要がないことのほうが多い。あくまで目的は「自分の意見を通すこと」であって、「相手の意見を否定すること」「相手に否を認めさせること」ではない。なので、相手の意見を取り入れながら、自分の意見をバージョンアップしていけばよいのである。(部下の遅刻のケースで言えば、「なるほど、夜なかなか眠れなくて遅刻してしまうのか。じゃあ、病院に行って睡眠導入剤を処方してもらったらどうだい?」でいい。そういうアプローチがイメージできないと、「私の気持ちがたるんでいて悪うございました。明日から気を付けます」と相手に言わせるために説教をする。)
多くの場合、無用の対立がものごとの効率を押し下げている。なので、議論が長引いているようなときには「この議論に意味はあるのだろうか?」と考えて、議論のプロセスを客観的に検証してみることも大切だ。