2016.03.23
耳を作るプロセス:
「受容」と「共感」という言葉があちこちで紹介されている。それくらい重要なわけだが、言葉としては認知されても、これを日常業務で行動化して役立てている人を見る機会は少ない。カウンセラーやコールセンターの方など、人の話を聞くのが仕事だとイメージしやすい。だけど、営業や事務、生産などの職種では、その活用シーンがイメージしにくいようだ。
私が業務分析やアセスメントのインタビューでよく出会うのは、「耳を作る」という表現だ。相手に自分の話を聞いて欲しい時に使うという。たとえば、営業の方がお客さんに提案をしたい時。部門間の折衝で、こちらの言い分を呑んでほしい時。上司が部下に指導して自分の誤りに気付いてほしい時。そういう時に、受容と共感というアプローチを「聞く耳を作る」ために使う。(本人は受容と共感という言葉を知らないケースも多い。経験や伝承で身につけたので、こういう表現になっている。)
耳を作るとはこういうことだ。提案したい時や何かを主張したい時、しかも相手がそれを素直に聞いてくれない時というのは、何とか相手にわかってもらおうとして口数が多くなりがちである。自分の口数が多くなればなるほど、相手の意見なんかどうでもよくなっていく。耳を貸さない状態になる。しかし、冷静に考えればそういう時は、相手も同じ状態なのだ。自分の意見を聞いてもらうことに集中するあまり、こちらの意見を聞く耳を持たない。
そういう時に、相手に聞く耳を持ってもらうためには、まず相手に言いたいことを全部言わせてしまうことだ。そうして言いたいことを全部聞いてもらって、相手の懐が空っぽになると、こちらの意見を聞く余裕が出てくる。「聞く耳」が出来てくるのである。
受容と共感というのは聞く技術だ。しかし実は、聞く仕事だけでなく、発信する仕事においても重要な技術なのである。