2016.03.10
会議と文書が減らない理由:
たいていの企業の、多くの職場で、たくさんの人々が会議と文書に悩まされれている。無駄に長い。無駄に多い。それはなんとなくわかっているのだけれど、じゃあ何をどう減らしたら良いのかと聞かれると応えられない。
会議も文書も、増えていくメカニズムは概ね共通している。(と、いうよりは、無駄な仕事が増えていくメカニズムはだいたい一緒だ。)
根本原因は「不安」である。私たちは不安に弱い。だから、少しでも不安要素を思いつくと、何か対処したくなる。書類で言えば、それを読んだ人からこんなことを質問されたらどうしようとか、こういうことも知りたいんじゃないか、とか。そうするとその答えや情報を盛り込み始める。不安に弱い私たちは、仕事をする上で足し算がすごく得意だ。仕事を付け加えることは悪い印象をもたれないから、積極的に行う。不安を感じたらどんどん仕事を付け加えていく。一方で、不安に弱い私たちは仕事の引き算が苦手だ。一度足してしまうと、それを止めることができない。何かの必要性があって一時的に始めた会議なのに、その会議を何回かやっている間に、「ついでだからこの会議でこういうテーマについても話し合おう」と、目的を足し算する。すると、元々の会議の目的が消滅しても、追加した目的が継続しているので、その会議そのものをやめられなくなる。もともとは「ついで」のはずだったのに。しかも、そうやって目的が追加された結果、会議が長くなって1時間とか2時間になるが、その時間も減らすことができない。当初の目的がなくなって、ついでの目的しかないわけだから、時間が極端に短くなっても不自然ではないのに、短く終わるとなんか不安。で、無駄に長引かせたりする。書類もしかり。繰り返し作っているうちに、いろいろと追加はされていくが、不要になったからと言って削ることはできない。
会議や書類を削減するためには、この「不安だから」やっている部分を炙り出すことが大切だ。炙り出す方法は簡単。「なかったらどうなるか」を繰り返し考えるのである。例えば、このコラム。やらなかったらどうなるか。実はあまり思いつかない。強いて言えば、たまに読んでくれた方からコメントをいただけると、嬉しい。それが無くなる。それが無くなったらどうなるか・・・こんな風に考えたときに、「強いて言えば」というくらいのインパクトしかないのであれば、その部分を削ることができる。そうやって、一つ一つの仕事の必要性を吟味して引き算を繰り返していくことが、会議や文書、その他の無駄な業務の削減につながっていく。(このコラムは趣味でやっているので、特に削る意図はないが・・・忙しい時はつい頻度が落ちる。)
コツといえば、いきなりごそっと一つの会議や文書を減らそうとしないこと。それを分解してみて、「この部分は」という見方をすること。不安に弱い私たちが、いきなり大きく削ることは難しい。小さな「引き算」を積み重ねていく方が、性に合っているのである。