2019.09.09
(9)コンピテンシーインタビューの技術 ⑦思考、行動を聴く(その2)
相手の工夫や行動について、
「それは、いつ頃のことでしたか?」
と、確認したときに、相手から複数日にまたがる期間が提示されたら、
「これではまだ抽象的だ。」
と、認識して、具体化していかなければならない。
そこに気づくところまでが、前回の内容でした。
では、そこからどのように具体化していくべきか。それが今回のテーマです。
最低限必要なレベルの具体性として、日付レベルの具体性が必要だと申し上げました。そこで、具体化していくためのキーワードが『時系列』です。
よく、話が上手とか、あの人は話が分かりやすいという場合、その多くは、話の整理のしかたに起因します。話を上手に整理できれば、わかりやすくなる。それが整理できず、ごちゃごちゃと行ったり来たりすると、わかりにくくなります。
人を客観的に評価しようとする場合、大切なのは、相手の話しかたの上手下手に左右されてはいけないという点です。そこで、出てくるのが『時系列』。
話を整理するときに、私たちは何らかのフレームワークを用いています。起承転結、原因と結果、5W2Hといったものがそのフレームワークです。その選び方が、話しのうまい下手を左右する。
時系列というのは、いちばんシンプルなフレームワークであり、思考力の有無に左右されないという点でも、コンピテンシーインタビューに適しています。
相手のプレゼン力やその場の瞬発力など、相手の部分的な『保有能力』の発揮で全体の評価がぶれてしまうのは、成果の再現性に着目するコンピテンシーの考え方では本意ではありません。
その点、時系列で話す分には、必要なのは思考力ではなく、思い出す力だけですから、よぶんな『保有能力』の影響は最小化されます。
具体的な質問方法ですが、まずは、時系列の最初を押さえます。
相手の最後のセリフからスタートしてみましょう。
「えっと、6月の最初ぐらいから初めて、完成したのは9月末くらいだったと思います。」
「わかりました。それでは、その工夫、行動のいちばん初めを思い出してください。」
「相手の特徴に合わせた研修スタイルを構築するうえで、あなた自身が、まずいちばん最初に行ったのは、いつ、どこで、どのような行動でしたか?」
こんな質問からスタートします。
私が研修などでよくアドバイスするのが、この、
『まず、いちばん、さいしょに』
と、いう聞き方です。
ちなみに、これをWordで入力すると、要校正の赤い波線がつけられてしまいます。いわゆる重複というミスだと認識されるのです。
「まず」と「いちばん」は同時に使うべきものではなく、同時に「いちばん」と「最初」も同意になるので。
だけど、あえてこの同じ意味合いの三つをセットで使うことをお勧めしているのです。
理由、根拠は、あくまで私のアセスメント上の経験にすぎません。
ですが、その経験の中では、意外と、
「それにあたって、まず何をしましたか?」
「それにあたって、最初に何をしましたか?」
と、いうように、単体でこれらの言葉を使うと、相手の方から時系列の最初の行動が出てこないのです。
ところが、
「それにあたって、まず、いちばん、さいしょに、いつ、どこで、どんなところから手を付けたのですか?」
と、いうように、「はじめ」という同じ意味の単語を三つ並べて、くどいくらいに強調し、念を押して質問すると、きちんと時系列の最初が出てくるのです。
ここで言いたいのは、時系列の最初を押さえるのは、そのくらい大切なんだ、ということです。
行動の手順が正しく理解できると、相手の思考プロセスも含めて正確に再現することができます。
しかし、中途半端に、2手目、3手目の行動からスタートしてしまうと、
「なんで、その行動が出てきたのだろう?」
と、いうように、相手のストーリーが理解できなくなるということが、よくあるのです。
「そうですね。最初は、6月の下旬、たしか28日だったと思いますが、それまでに内容を理解させるところまで終わっていたので、さあ実践してみようということで、模擬実演会を開きました。」
と、このように、相手から特定の日付の行動が出てきたら、その行動をとった場所を聴きます。
「それは、どこでのことでしたか?」
「本社の会議室です。」
このように、日付と場所が確定したところで、一応の具体性が確保されたことになります。
一応の、というのは、日付と場所が確定されれば、少なくともスキーマで、
「やった気になっているだけで、実は事実がない。」
などという、初歩的なワナは、この段階で回避できているはずです。
こうして、スキーマ対策としての具体性が確保できたら、次はコンピテンシー分析、つまり評価に必要な、その場での思考と行動を具体化していくステップに入ります。
それを、次回お伝えしていきます。
