2018.05.14
結果を見てからモノをいう人;
現場の実務において、成果を阻む要因はいくつかあるが、その中でもいちばん扱いに困るのが「結果を見てからモノをいう人」である。特に管理職がこの「結果を見てからモノをいう人」だと、その組織で成果を出すことは極めて難しくなる。
結果を見てからモノをいう人は、リスクをとることが苦手だ。多くの場合、成果を出すためには事前にリスクを取らなければならない。たとえば、今まで以上に売上をあげようとすれば、今までとは異なるアプローチをとらなければならない。どんな方法をとるにせよ、「これなら必ずうまくいく」などと保証された方法はあり得ない。また、いままでと異なるアプローチをとることで、もしかしたら今までよりも売上が下がることだってありうる。ところが、「本当にこの方法でうまくいくのか?」「売上が落ちたらどうするんだ?」というように、答えの出しようがない問いかけを繰り返すのである。傍観者がそれを言う分には害は少ないが、管理職(さらには経営者)がそれを言ってしまえば、部下は答えなければならない。また、本人も問いかけてしまった以上、その答えが出ない限り、Goサインは出せない。いずれにせよ、答えなど出しようがないので、結局、何のチャレンジもできずに成果が阻まれるのである。
こういう人は、そうやって自分がブレーキをかけていることに気が付かない。成果が出なかったという結果だけに着目し、「なぜ、成果が出なかったんだ」と部下を問い詰める。または、事前の無責任な問いかけに対して、部下が「やってみなければわからないから、やらせてくれ」と押し切った場合には、「ほら見ろ、自分が言った通り、うまくいかなかったじゃないか」と、まさに結果を見てからモノをいう。だけど、ここで肝心なのは「自分が言った通り」という錯覚である。実は、何も言ってない。「本当にうまくいくのか?」「うまくいかなかったらどうするんだ?」と問いかけているだけで、「こういう理由でうまくいかない」とは言っていないのである。頭を使わず、漠然と不安という感覚だけでモノを言っているのである。
管理職のあるべき姿は、結果を見てからモノをいう人ではない。事前にモノをいう人。もう少し言えば、事前に不十分な情報量の中で、リスクをとって意思決定を下す人である。また、部下の提案を否定するなら、自らの責任で明確な代案を提示できる人である。そして、結果が出た後には、良い結果に対しては適切な評価を、悪い結果に対しては、挽回や改善のためのリーダーシップを発揮することができる人である。
では、結果を見てからモノをいう人にならないためには、どんなことに気を付けたらいいのだろうか。こんな考え方をし、実践しているハイパフォーマーがいたので、それを紹介したい。
まず、部下にゴールを示したら、基本的にやり方は部下に任せる。ただし、部下のやり方でゴールを達成できない「不足分」があれば、その不足を補うように促すか、またはその案をこちらからも出す。
次に、部下の案で発生するリスクを洗い出す。そのリスクがヒットした場合に、どんな問題が起きるか。その問題を「自分が管理職として解決できるか」を考える。自分が管理職として解決できる範囲内のリスクであれば、部下の案を許容し、解決できる範囲を超えるリスクがある場合には、そのリスクを具体的に示し、対応を話し合う(丸投げしない)。
この考え方にはまったく非の打ち所がないと思った。素晴らしいのは、「管理職として解決できる範囲」のリスクの一つに、「目標未達成で自分が上司から非難されるリスク」を含めていること。部下が成果をあげるために必要な検討を、自らが頭を振り絞って事前にしっかり行う。結果が出なかったときはそれを受け止める覚悟がある。
この人の話を聞いて、部下に信頼される上司を目指すには、「結果を見てからモノをいう人」にならないようにすること。まずはそれが大切なのだと思った。