2017.03.21
できないわけがない:
最近、ある企業で議論をしていて、発想の癖って大事だなと思った。私たちは言語を用いて思考するから、発想の癖というのは、そのまま口癖になって現れる。
経済界と政界の上の方では、残業100時間を許容するかどうかという議論が繰り返されたが、その企業では、あらゆる職種、あらゆる時期において『残業をゼロにする』という目標について、話し合われていた。そういう目標を設定するかどうか、という話し合いである。多くの参加者が「それができれば理想だが、現実的にできるわけがない」と反対の意を示した。そういう人たちは、どのくらいが落としどころかという議論をしようとする。その会社は一部の職種の人が恒常的に60時間から80時間の残業をしていて、多くの社員が40時間くらい。少ないところがいくつかあって、そこは20時間くらいといった現状。なので、「一部の忙しい職種の人が40時間、その他の人は20時間以内という目標でどうか」といった消極的な意見が大勢を占めた。
それを聞いて、ある方がこういった。「80時間の人が40時間になり、40時間の人を20時間にできるのならば、20時間の人はゼロになるはずだよな」と。以下、その後のやりとりである。
消極派「いや、現実的にゼロにはならないだろう。帰る間際に仕事が発生することだってあるし。」
積極派「だったら間際に仕事が発生しないようにするか、または間際に発生しても、翌日に持ち越せばいいじゃないか」
消極派「いや、それはあくまで例であって、それ以外にも何があるかわからないじゃないか。」
積極派「そういう問題を洗い出して、解決するのが、残業削減であり、働き方改革じゃないか。」
消極派「それができれば理想だけど、全てがそんな風にうまくできるわけじゃないだろう。」
で、横で聞いていた私は暇だったので、そのセリフを全部テキストで記録して、消極派の人たちにスライドで映して見せた。すると、
「こうやって見ると、部下に説教していることを自分がやっていることに気がついた。できない理由ばかり探すのではなく、できるはずだと考えてチャレンジしなきゃいけないよな。」
と、結果的に全社員残業ゼロを目指すことになった。
目指すのはタダだし、目指したからと言って、達成できなかったら殺されるわけでもない。できるわけがないと言い切れることもなければ、できないわけがないと言い切れることだって普通はないのである。だから、結果的に「できないわけがない」と考えて、そういう目標を設定する人の方が、失うものが少なく、得るものが多い。
「できるわけがない」と無意識に口に出している人は、それだけで大半のチャンスを見逃しているのだ。